2012 Fiscal Year Annual Research Report
反応動力学における原子核運動の超多体量子化の理論と化学反応論の深化
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23245002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高塚 和夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (70154797)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 理論化学 / 反応動力学 / 分子分光 / 電子状態 / 分子動力学 |
Research Abstract |
筆者は,時間分解光電子分光法による非断熱遷移における原子核波束分岐の直接観測の理論,化学反応における電子動力学,超ボルン・オッペンハイマー理論(電子・原子核同時量子動力学)など,新しい時代の化学動力学理論を先導してきた.さらに,タンパクなどの巨大な分子のダイナミクスの量子論,すなわち,多数の原子核の実時間量子論を最終的に完成させ,非常に多くの原子(1000原子を当面の目標とする)を含む分子系中の原子核の運動を量子論で扱うための「超多体量子動力学理論」を築き,多体化学反応動力学を飛躍的に発展・深化させることを目的してきた.幸い,長い時間をかけて取り組んできた「超多体量子動力学理論」が,最近ようやく完成した(論文執筆中).これにより本研究の最大の課題を克服した.本理論では,動力学を表現する位相流をラグランジュ描像で表現し,量子位相を含めた波動関数の値に関する「保存則」を導いた後,さらに量子拡散項による特異点の解消という手続きで,波動関数の時間発展が記述される.ここでは,古典力学と量子力学の類似関係と相違性が階層的に明示されているだけでなく,今まで不可能であった多次元計算が実際にできるようになった.低次元系における純量子論との比較計算によって,この近似理論が極めて高精度であることも確かめられた.今後,この理論をさらに拡張し,より応用しやすいアルゴリズムの作成に進んだ後,タンパクなどへの応用を行う計画である. また,筆者らが開発してきた超ボルン・オッペンハイマー理論(非断熱電子動力学の理論)は,電子と原子核の同時量子動力学のための理論であるが,従来,化学理論の土台の役割りを果たしてきたポテンシャルエネルギー曲面の概念が意味をなさないほどの縮重系についての化学理論を発展させた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
長い時間をかけて取り組んできた「超多体量子動力学理論」が,ようやく完成した.これは真に画期的な理論であり,今後化学反応動力学の分野を大きく書き変えていく可能性を持っている.課題研究開始2年目で,検証も含めて,これが完成したのは,当初計画より早いと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
「超多体量子動力学理論」のさらなる検証と,実用上尾の問題点を点検したのち,その応用研究を続ける.具体的には,(1)少数次元ではあるがカオス動力学のような難しい系を使って,理論を数値的に検証する. (2) タンパクレベルの量子動力学や原子クラスターの構造転移における量子効果の検証の研究に着手する.(3)トンネル現象に対応するため,ハミルトン‐ヤコビ方程式の複素数解の解析に取り組む.(4)超ボルン・オッペンハイマー理論で得られる, non-Born-Oppenheimer軌道(非古典力学的な運動)の量子化を「超多体量子動力学理論」を使って行う.(5)非断熱電子動力学の立場から,溶液中の化学反応の動力学理論を展開する.
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Research Products
(20 results)