2011 Fiscal Year Annual Research Report
光電導性高分子固体系における非局在イオン状態生成のダイナミクスとメカニズム
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23245004
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮坂 博 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40182000)
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Keywords | フェムト秒分光 / 光誘起電子移動 / 光電変換 / 有機光電導体 / ホール電導 / ホッピング電導 |
Research Abstract |
天然系や人工系の光電変換初期過程として重要な役割を果たしている電荷シフト過程(たとえばA^-D^+D→ADD^+)において重要な役割を果たす非局在化カチオン状態の生成ダイナミクスとメカニズムの解明を目指し、本年度は、既に100fs程度の分解能で測定を行っているポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVCz)系を中心とする芳香族ビニルポリマー系を対象に、(1)測定装置の時間分解能の向上、(2)観測波長域の拡大、の2点からの測定系の拡充を行い、カチオンの非局在化過程を支配する因子の獲得を目指した。(1)測定装置の時間分解能の向上については、現有の非同軸OPAの出力に対して空間光位相変調器を導入し、試料位置で安定に短いパルス幅を得ることとした。装置購入が遅れたが、目標値の<20fsの分解能は達成できた。(2)の観測波長域拡大については、最近開発された新検出器(2600nmまで検出可能)を新たに購入し測定装置に組み合わせた。予備的な測定では、スペクトル極大の位置の情報が取得可能となった。これらの新装置については、概ねの基礎データ取得が終了した。また、低温10Kまでのフェムト秒-ピコ秒時間分解計測をPVCz固体系に応用し、光誘起電荷分離に引き続く電荷シフト過程の速度定数が、室温から10Kの間で変化しないこと、またこの反応過程の初期過程には、側鎖芳香族基間の相対的配置の揺らぎに対応するコヒーレントな振動が重要な役割を果たしていることがわかった。これらのコヒーレント振動に対応する分子運動についてもほぼ特定ができており、この同定を確実にするための新規分子系の測定を含めて、24年度以降に研究を展開する基礎的な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付決定が11月であったため装置発注と導入の時期が遅くなったが、予備的な基礎データの取得は完了したままた24年度に早々に研究を開始しており、概ね順調に展開できていると判断できる。新装置に依存していない部分については、23年度に10Kでまでの温度効果の測定などが完了しており、これについては当初の計画通りに順調に展開できている。
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Strategy for Future Research Activity |
分光学的な測定は順調に推移しているので、基本的には計画通り進行する。更にプローブ顕微鏡による試料の荷電情報に関する知見も、カチオンの非局在化状態の検出には有効であると考えられる結果が出ている。そのため、当初の計画とは若干異なるが、廉価なプローブ顕微鏡を導入し、これらのプローブ顕微鏡による測定結果と分光的な測定を組み合わせて、研究を展開することにした。
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Research Products
(4 results)