2011 Fiscal Year Annual Research Report
気相クラスターの液相注入法の開発と反応・集積過程の探究
Project/Area Number |
23245006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺嵜 亨 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (60222147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 雅 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (10610264)
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Keywords | 金属クラスター / アルミニウム / 銀 / イオン-分子反応 / 分子吸着 / 溶媒和 / 溶液物理化学 / ナノ材料 |
Research Abstract |
原子分子クラスターを構成要素とする結晶など、クラスター集積体の創製を目的として、気相クラスターの反応・集積過程の物理化学研究を開始した。とりわけ、特異な物性を活かした材料化が期待される金属元素のクラスターに着目し、気相中で生成した金属クラスターを液相溶媒に注入し組織化させる独自の実験手段「気相クラスター液相注入法」の開発と、これら金属クラスターの液相中反応ダイナミクスの解明を目指している。研究初年度の本年は、実験装置の開発と既存装置を用いた予備実験を推進した。実験装置の開発では、金属クラスターの生成・搬送装置の基本設計を練り、設計図面の準備ならびに真空排気系や実験制御用エレクトロニクス部分の構築を進めた。また、液相溶媒となる液滴の生成に関して、その生成試験をまず大気中で行い、直径50ミクロン程度の水滴が再現性の良く生成される様子を画像観測して確認した。一方で、クラスターの液相注入の初期過程に関して、金属クラスターの溶媒和を念頭に実験を行った。具体的には、サイズ選別された金属クラスターをイオントラップに捕捉し、窒素分子や水分子が逐次的に吸着する過程と、引き続く反応を調べた。主な成果として、銀クラスターAg_<N^+>への窒素分子の吸着過程について、特に6,7量体がN_2との親和性が高いことを見出した。高い光増感作用が注目されるこれら銀クラスターを、凝集せず分散させる可能性を示す結果と言える。一方、アルミニウムクラスターAl_<N^+>と水分子との反応では、9,13量体などは、単に水分子が吸着し、水中に分散されると予想された一方で、10,11量体などでは酸化物Al_<N^+>が選択的に生成され、水素発生が示唆された。負イオン種Al_N^-では異なる反応機構での水素発生が報告されており、アルミニウムクラスターのサイズや電子状態で水からの水素発生反応の制御が可能であると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験装置の開発については、暫定的に7割の研究費で進めるという異例の状況の中で、アイディアを二転三転させながら設計を進めた。その結果、基本設計の確定がやや遅れ、真空槽などの調達を来年度に持ち越す必要が生じたが、その一方で、来年度予定の一部を年内に進め、全体として進捗のバランスを取ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って実験装置を立ち上げ、巨大分子クラスターと呼ぶべき液相溶媒に金属クラスターを注入・溶解する実験を進める。これらの実験に基づいて、金属クラスターの液相中の反応ダイナミクスの解明を進めてゆく。
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Research Products
(32 results)