2011 Fiscal Year Annual Research Report
キラル有機化合物の相転移が誘起する特異な化学現象の適用範囲の拡大と一般化
Project/Area Number |
23245008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田村 類 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60207256)
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Keywords | 優先富化現象 / 複雑系光学分割現象 / 磁性ミセル・ゲル / メタルフリー磁性ソフトマテリアル / 磁気液晶効果 / キラル有機ラジカル液晶 / 有機磁性液晶 / 両親媒性ラジカル化合物 |
Research Abstract |
次の2テーマについて検討し、それぞれについてブレークスルー的な発見があった。 (A)アミノ酸系医薬やカルボン酸系医薬のラセミ体とアキラル有機酸の二成分共結晶が示す優先富化現象:必須アミノ酸のフェニルアラニンのラセミ体はラセミ化合物に分類され、単純な再結晶による光学分割は不可能と考えられていた。一方、フェニルアラニンとフマル酸の1:1共結晶のラセミ体もラセミ化合物に分類されるが、これまでに研究代表者らが明らかにしてきた優先富化現象が起こるための4つの必要条件をこの共結晶が満たしたため、非平衡条件下で水から再結晶したところ、予想通り効率的な優先富化現象が発現した。さらに、そのラセミ体がラセミ化合物に分類される、医薬抗炎症剤のケトプロフェンが、やはり優先富化現象に必要な4つの必要条件を満たしたため、水とエタノールの混合溶媒から非平衡条件下で再結晶したところ、明瞭な優先富化現象を示した。以上のように、ラセミ化合物に分類される化合物のラセミ体が、複雑系光学分割現象である優先富化現象を示すことを、世界ではじめて明らかにした。 (B)キラル有機ラジカル液晶を起点とするメタルフリーな有機磁性ソフトマテリアル候補化合物の合成と磁性:3種類の新規キラルソフトマテリアルの合成に成功した。第一に、正の誘電異方性をもつキラル有機ニトロキシドラジカル液晶物質を合成し、その光学活性体が正の磁気液晶効果(J>0)を示すのに対して、そのラセミ体が負の磁気液晶効果(J<0)を示すことを見出し、その磁性発現のメカニズムを提唱した。第二に、アンモニウムを親水性基とするキラル両親媒性ニトロキシドラジカル化合物を合成し、これが水中でミセルやエマルションを形成し、特に中性の油性ラジカルを内包したエマルションが磁石に引きつけられて水中を動くことをはじめて明らかにした。第三に、アミノ酸残基を親水性基とするキラル有機ニトロキシドラジカル化合物を合成し、これがヒドロゲルを形成することを明らかにした。また、これらの物質の相転移挙動を電子スピン共鳴法により追跡できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画は盛り沢山であったが、鍵となるラジカル化合物の合成にすべて成功しており、ほぼ期待どおりの展開を見せている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究計画が順調に進展し、平成24年度以降に進むべき方向性と具体性が明確になったので、これに従って研究を継続する。同時に、当初の研究計画調書に記載した拡張テーマについても取り組む所存である。
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Research Products
(30 results)