2011 Fiscal Year Annual Research Report
単一コロイド・エアロゾル液滴に基づくマイクロ分析化学
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23245015
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
喜多村 昇 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (50134838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石坂 昌司 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (80311520)
作田 絵里 北海道大学, 大学院・理学研究院, 特任助教 (80554378)
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Keywords | エアロゾル液滴 / コロイド液滴 / レーザー捕捉 / 顕微計測 / 単一微粒子 / ドナン膜電位 |
Research Abstract |
単一エアロゾル化学:マイクロメートルサイズのエアロゾル水滴の物性・性質について詳細な基礎研究を行った。大気中において単一水滴のレーザー捕捉を安定に行うためには、測定容器の湿度や捕捉レーザー光による水滴の温度上昇などを厳密に制御する必要がある。新たに湿度制御測定容器を開発し、湿度に基づいたエアロゾル水滴のサイズ制御に成功した。また、水滴からのラマン散乱光のWhispering Gallery Mode共鳴を利用し、水滴サイズをナノメートルレベルで計測する手法を確立した。これに基づき、Nd:YAGレーザーからの532nm光による水滴のレーザー捕捉による温度変化を、水滴サイズ変化から見積もったところ、温度上昇は殆ど観測されなかった。これらの事から、エアロゾル水滴の安定かつ制御されたレーザー捕捉法を確立することができた。 単一コロイド化学:単一コロイド微粒子に関するマイクロ分析化学に関し、単一微粒子のレーザー捕捉・顕微分光法を駆使してイオン交換過程の詳細な研究を行った。樹脂中における蛍光強度プロファイル測定法や励起エネルギー移動消光法を用い、単一樹脂中における色素陽イオンであるローダミンBやマラカイトグリーンの樹脂内拡散定数の直接測定と、そのDonnan膜電位依存性を測定した。その結果、樹脂/溶液界面に発生するDonnan膜電位はマイナス数ミリボルトからマイナス数百ミリボルトの範囲であり、負電位が大きいほど樹脂内の陽イオンの拡散は指数関数的に遅くなることを実験的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安定なエアロゾル液滴の捕捉、水滴サイズ制御、水滴サイズ計測法に大きな成果をあげた。これらの実験的基盤を確立することにより、次年度以降、所期の目的へ向けて研究を推進することが可能である。また、所期の目的には無かったが、単一微粒子に基づいたマイクロ分析化学の研究として、単一イオン交換樹脂レベルにおいてイオン交換過程を律する因子としてのDonnan電位効果を明らかにすることができた。単一樹脂レベルにおいてイオンの拡散過程を直接測定し、それに対するDonnan電位効果を実験的に明らかにしたのは世界的に初めてである。これらの点は当初の計画以上の成果であるが、コロイド液滴系の研究は遅れているのが現状である。以上を総括し、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
11の項で述べたように、イオン交換樹脂に基づいたマイクロ分析化学の研究に大きな進展を得たため、来年度以降、本研究も取り上げ、より精緻かつ系統的な研究を進める。
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