2012 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒波長可変レーザーイオン化質量分析計の開発とその科学計測への応用
Project/Area Number |
23245017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今坂 藤太郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (30127980)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超高感度レーザーイオン化質量分析計 / 計測科学 / 超短パルスレーザーイオン化 / 網羅分析 / ダイオキシン / PCB |
Research Abstract |
レーザーイオン化質量分析計の高感度化を目的とした新規導入法の研究では、従来導入法より2倍高い検出感度が得られた。また、フェムト秒レーザー光を金属に照射して発生する光電子を用いたイオン化を研究したが、これはレーザーイオン化質量分析計内で電子衝撃イオン化も可能とするものであった。クロロベンゼンを試料として研究し、開発した装置で電子イオン化できることを確認し、本質量分析計の高性能化が達成された。 開発したレーザーイオン化質量分析計を用い、PCDF, PCDD, PCB計32種の化合物を含む試料の網羅分析を行った。特に、2種のカラム(HP-5, DB-5ms)を比較・検討し、妨害成分なく全ての化合物を高感度に検出できるカラムの調査を行った。HP-5の場合ではカラムの固定相が同時にイオン化されてしまい、妨害成分が生じ検出感度が低下した。一方、DB-5msを用いた場合固定相のイオン化がなく、32種ほぼすべての化合物においてHP-5よりも高い検出感度が得られた。カラムの内径についても、0.25 mm, 0.18 mmの2種を比較・検討した。ほぼ全ての化合物において内径が小さい方が高い感度が得られており、最大で3倍感度を向上することができた。 300 nmレーザー・選択制 ジオキサン、クロロナフタレン、PCB等種々の化合物におけるイオン化挙動のイオン化レーザー波長依存性を研究した。その内多環芳香族化合物(クロロナフタレン)とクロロベンゼンのイオン化挙動の比較においては、イオン化波長を267 nmから290 nmへ変更することでクロロナフタレンのイオン信号強度が10分の1まで低下する一方、クロロナフタレンの信号強度は半分に留まった。レーザー波長によりイオン化化合物を選択できることが示された。さらに、レーザー光のパルス幅によってもイオン化化合物を選択できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当研究グループのレーザーイオン化質量分析計をより高感度にし、世界標準となっている高分解能ガスクロマトグラフ/二重収束型高分解能質量分析計よりも高い感度を実現することを目的とし、研究を行った。まず、試料を横から導入する新規試料導入法の研究、固定相イオン化による妨害成分の少ないカラムの選定、カラム内径と検出感度の関係を研究した。いずれも分析計の高感度化に繋がり、目的通りの成果が得られている。 分析計の実用性を評価するために網羅分析を行い、ダイオキシン、PCB等を高感度、高精度に検出・同定できることを示した。さらにレーザーパルスにより電子を放出させ、これを用いて試料をイオン化する電子衝撃イオン化法を組み込んだ装置開発についても目的通りに遂行できた。 イオン化レーザー波長を選択することでイオン化する分子種を選択する研究を行い、実際にそれが可能であることを実験で示し、分析計の選択性を向上させる研究も完遂することができた。当初想定していなかった成果であるが、一般に共鳴イオン化よりもイオン化効率が2-3桁低いと言われてきた非共鳴イオン化においても、パルス幅40 fsの短いイオン化レーザーパルスを用いれば共鳴イオン化と比べ遜色ないイオン化効率が得られることが明らかとなり、詳細な調査を行った。この成果はイオン化光源のパルス幅を短縮させることにより本分析計で分析可能な化合物をさらに増やすことができ、有用性を更に向上させることができるということが明らかとなった。当初の期待以上の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は(A)レーザーイオン化質量分析計のためのイオン化光源開発と(B)分析計の計測科学への応用に分けて研究を推進する。 (A)において、水素中に水素の振動ラマン周波数の2倍及び3倍の周波数のレーザーを入射させることで四波ラマン混合により近赤外から深紫外領域に亘って多数のラマン光を発生させることができるが、入射光のチャープ量を制御することにより、生じるラマン光のチャープ量を制御できる。この原理を利用した、パルス幅の短いイオン化レーザー光源開発研究を推進する。 (B)においては、まず、ヒト毛髪中に存在するダイオキシンを抽出して計測する方法を開発する。二次元データ表示法を利用して多数の成分を網羅的に測定すると共に、その有用性を示す。一方、中国から飛来すると懸念されている微粒子(PM2.5)は、多数の人々の生活環境を脅かしている。そこでPM2.5に含まれる微量の有機物を網羅的に測定する方法を開発する。更に、爆発物の分析を行う。過酸化アセトン、トリニトロトルエン、ペンスリットなどの爆発物は、通常の質量分析計では高感度に測定することが難しい。そこで、超短パルスレーザーを用いてイオン化することにより、分子イオンを増強すると共に、精度よくかつ高感度に計測する方法を開発する。最後に、農薬などの一部は光学活性能を有することが知られている。その生物活性は光学活性能に依存するため、キラル体を区別して測定する必要がある。そこで、光学異性体を分離できるガスクロマトグラフカラムを用い、これら異性体を分離して計測する分析装置開発研究を遂行する。
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[Presentation] レーザー分析2012
Author(s)
今坂 藤太郎
Organizer
化学物質評価研究機構講演会
Place of Presentation
福岡市、産学連携交流センター
Year and Date
20120721-20120721
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