2013 Fiscal Year Annual Research Report
異方性ハイブリッドゲル薄膜を有機相とする高次機能化HPLC分離剤の開拓
Project/Area Number |
23245018
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊原 博隆 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (10151648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永岡 昭二 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, その他 (10227994)
高藤 誠 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (50332086)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 液体クロマトグラフィ / 分子形状識別 / イオン液体 / アゾベンゼン / 分子配向場 / 有機・無機ハイブリッド |
Research Abstract |
本研究は、高速液体クロマトグラフィにおいて、高選択的・高速分離等を実現する新しいカラム用分離剤の開発を目的として、均質な物理界面の構築技術の開発および特異的な選択性を発現させるための配向性有機相の開発を目指している。本年度の研究成果を以下のように要約する。 (1)前年度に引き続き、微粒子中に均質なミクロポアを構築するため、シリカナノ粒子やナノダイヤ、ナノグラフェン等の無機物を有機微粒子界面に固定化する方法の確立を目指した。具体的には、申請者らによって開発された自己組織化重合法ならびに超臨界二酸化炭素を用いる手法を展開して行い、様々な有機・無機ハイブリッド型微粒子の作製に成功した。研究成果は、Pacific Polymer Conference等の国際会議において6件報告するとともに、特許出願(国内およびPCT)を行った。 (2)シリカ表面に、有機性分子配向場を構築し、特異な選択性を実現するため、側鎖官能基(相互作用点)を一次元的に集積する手法として、イオン性液体の重合と、アゾベンゼンをイオン対とする特殊なポリイオン液体系有機層を新たに設計した。多環芳香族類やその幾何異性体、ステロイド類、トコフェロール類に対して高い選択性が得られることを確認した。研究成果は、Chem. Eur. J. および Chem. Comm. において報告した。 (3)シリカ表面に、チロシンを導入した特異なシーケンスをもつトリペプチドを設計・固定化し、液体クロマトグラフィに応用するだけでなく、廃液処理のための吸着剤として活用した。研究成果はRSC Advancesによって公開した。 (4)以上のほか、有機相にキラリティを導入することを目的として、ポリイオン性液体中にキラリティを導入するための分子設計、合成を行った。本課題については、次年度も継続的に実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)均質な物理界面の構築技術を開発する目標については、申請者らが開発した自己組織化重合法および超臨界二酸化炭素法を展開して、微粒子上でナノ界面を構築する手法を開発し、一定の成果が得られた。6件の国際会議での報告や特許出願を行った。次年度においては、研究論文としての発表に結びつけたい。 (2)選択性発現の起源となる有機相を開発する目標については、本年度は主にイオン性液体を活用する手法に注力し、とくにアゾベンゼンの配向に由来する配向場の構築を行い、高い選択性の発現に成功した。研究成果については、権威ある学術雑誌(英国王立化学会およびWiley VCH社)に研究論文として報告した。 (3)チロシンを含む特異なシーケンスからなるトリペプチドを有機相とする分離剤を新たに開発した。本研究の主課題である液体クロマトグラフィとしての展開に留まらず、廃液処理剤としての応用研究を実施した。研究成果については、権威ある雑誌(英国王立化学会)に論文として報告した。 (4)キラリティを有する有機相の開発を目標に、環状ジペプチドおよびイオン液体性モノマー中にキラリティを導入した分子を設計して合成に着手したが、最終目的物の合成には至らなかった。分子設計の見直しを含め、次年度についても引き続き実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度までに、申請者らが開発した自己組織化重合法および超臨界二酸化炭素法を展開して、微粒子上でナノ界面を構築する手法を開発し、様々な有機・無機ハイブリッド粒子の作製に成功した。次年度も引き続き同目標について検討を進め、とくにナノ空間特性の物性評価に注力したい。 (2)選択性発現の起源となる有機相の開発を引き続き検討する。前年度は、選択性の目標として、光学分割を対象とした有機相の開発を目指したが、合成の段階で最終目的物の合成には至らなかったため、次年度は分子設計の見直しを含めて検討したい。分子設計の候補としては、イオン液体中にキラルなイオン対を導入する方法や、キラル分子ゲルを導入する手法を検討したい。 (3)本年度までに多数の配向性有機相を導入した新規な分離剤の開発を行ってきたので、開発された分離剤の基本機能を見直し(分離の評価をさらに詳細に検討し)、新たな分離剤開発のための指標を確認したい。 (4)基本機能を再確認することにより、用途展開を含めた実用化研究も進める予定である。そのため、従前から分離対象としてきたトコロフェロール等の生理活性物質を始め、キラリティを有する医薬、農薬等への展開、環境分析を目的とした多環芳香族類等の分離・分析を進めたい。また、分析カラムレベルから分取カラムレベルへの展開も考慮したい。 (5)開発した分離剤の多くは、外部刺激応答性を有する有機相であるため、この特徴を活かしたマルチモード対応の分離や選択性のチューニングについて、さらに詳細に検討したい。
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