2011 Fiscal Year Annual Research Report
複合型糖鎖をもつ糖タンパク質の人工精密化学合成を用いる糖鎖機能解明の系統的研究
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23245037
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梶原 康宏 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50275020)
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Keywords | 糖タンパク質 / ペプチドチオエステル / 糖鎖 / タンパク質化学合成 / シアル酸 / Boc法 / ペプチド |
Research Abstract |
エリスロポエチン(EPO)は糖タンパク質であり、その糖鎖末端のシアル酸がEPOの活性に深く関与しているが、分子レベルでの機能解明には至っていない。現在、世界中でEPOの化学合成が検討されているが、シアリル糖ペプチドチオエステルの効率的な合成法がないため、全長糖鎖化ポリペプチド鎖の合成は成されていなかった。これはシアル酸残基の結合が酸に不安定であるため、酸処理を伴うペプチド固相合成法を利用し辛いことが原因であった。本研究ではシアル酸のカルボキシル基による分子内酸触媒反応が、シアリル結合の酸加水分解を起こすのではないかと考え、カルボキシル基を強酸に耐性を示す保護基でマスクすることで酸に対する安定性が向上するのではないかと考えた。そこで、シアル酸のカルボン酸に、酸で容易に脱保護されないフェナシル基を導入した。得られた糖鎖はBocペプチド固相合成法に用いるTfOHなどの強酸性条件で処理しても加水分解を受けなかった。このことから、分子内触媒反応がシアル酸の不安定性を決める要因と推定し、このフェナシル・シアリル糖鎖を用いることで、Bocペプチド固相合成法によるシアリル糖ペプチドチオエステルの合成を検討し、HFなどを使用しない容易な方法を確立した。そしてこの方法を利用して、83位に二分岐シアリル糖鎖を有するEPOの化学合成を行った。全長ポリペプチド鎖は6つのセグメントに分け、ペプチドセグメントと上記手法で得たシアリル糖ペプチドセグメントを、Native Chemical Ligation (NCL)法により順次連結し全長を得、続くフォールディング操作により、シアリル糖鎖をもつEPOの化学合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
糖タンパク質を簡便に化学合成するために必要な糖ペプチドチオエステルの合成法の確立が主の目標であったが、それを達成するとともにアミノ酸166個からなるエリスロポエチンの全化学合成に成功した。本来このテーマは2年目のものであった。この合成に平行して他の糖タンパク質の化学合成も順調であることから予想以上の成果を得る事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究方法は予定した以上に順調であることから、時間的に実施が困難と思われるテーマも平行して遂行できる目処がたったので、大腸菌発現法を組み合わせるなど更に簡便な糖タンパク質合成法の開発を目指す。
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Research Products
(18 results)