Research Abstract |
研究の目的 申請者は有機合成化学を基盤に有機半導体材料の開発と有機トランジスタへの応用を行ってきており,この中から「従来の枠に囚われない有機半導体骨格」の開発の重要性を強く認識してきた.本研究では,有望な新規骨格はもちろんのこと,これまでに報告例はあるものの材料として取り上げられていない骨格,または,適当な合成法がないためそのポテンシャルを十分に精査できていない半導体骨格(未踏有機半導体骨格)に焦点を当て,それらの設計・合成・応用を行うことを目的とする. 平成23年度において,ベンゾジチオフェン二量体やナフトジチオフェン類,さらには高度にπ電子系が拡張したチエノアセン系有機半導体などの含硫黄系未踏材料の開発を行い,これらを有機電界効果トランジスタ,有機薄膜太陽電池に応用し,これら新規材料のデバイスにおける特性と構造との相関を検討した.それにより,有機半導体材料として,またオリゴマーやポリマーの構成ユニット(ビルディングブロック)として有望であるものを開発した.さらに,有用中間体の簡便合成法の開発と環化反応の応用により,含硫黄系(チオフェン系)に加えて,酸素同属体であるフラン系未踏材料の合成にも成功した.これらの物性評価を行ったところ,興味深いことに蛍光特性などの光物性が顕著に異なることを見出し,これらを発光材料等の光学材料への応用も検討した.中でも,ビナフトフランが高効率の発光トランジスタ材料として有望であること,また,二層型有機薄膜太陽電池の活性層として,対応する硫黄体を大きく凌駕する性能を持つことを見出し,フラン系材料が有機光・電子材料として有望であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初想定した含硫黄系(チオフェン系)未踏半導体材料に加え,新たに含酸素系への展開も行い,両者の差異に加え,後者の特徴的な応用の可能性について明らかに出来たため.
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Strategy for Future Research Activity |
多様な材料系探索,および骨格探索を引き続き進めるとともに,その応用法,特にオリゴマー半導体,ポリマー半導体への応用を目指し,高効率なカップリング反応を活用する.このために,従来の複数の官能基を用いるクロス・カップリングから,CH活性化型のカップリングも検討する. また,材料応用の方向性として,トランジスタに加えて太陽電池にも注力し,世界的な競争分野となっている有機薄膜太陽電池の研究分野に新たな半導体骨格を提案することで,材料の多様性に基づく高効率化に寄与したいと考えている.
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