2012 Fiscal Year Annual Research Report
コロイドアモルファス集合体の構造発色メカニズムの解明と簡易調製手法の確立
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23245047
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹岡 敬和 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20303084)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シリカ微粒子 / 擬フォトニックバンドギャップ / アモルファス集合体 / 構造色 / 黒色微粒子 |
Research Abstract |
我々が豊かな生活を送る上で、様々な鮮やかな色を示し、退色しない顔料の存在は欠かせなくなっている。さらに、低毒性、低環境負荷性を備えた顔料が安価に大量に得られるようになれば、今後の我々の暮らしが永続的に発展可能で快適になることを後押しするだろう。そのためには、自然界に豊富に存在し、環境負荷性が低い自然調和性に優れた化合物を利用した顔料作りが求められる。 粒径の揃ったサブミクロンサイズのシリカ微粒子が形成する集合体は、粒子による光の散乱と干渉が原因で可視光領域に生じる擬フォトニックバンドギャップ(p-PBG)により、従来の顔料や染料を含まないにもかかわらず、シリカ微粒子の粒径や集合状態に応じた色を示す。この色は、集合体の構造が原因であるため、構造色と呼ばれる。シリカ微粒子の主成分であるSiO2は、化学的に非常に安定な化合物なので、化学実験のガラス器具などに利用されており、また、土壌の主成分としても存在している。さらに、シリカ微粒子の集合体が構造色を示すような粒径200nm以上のサブミクロンサイズならば生体への毒性も見られないことから、生体に対しても非常に安全な材料である。 そこで、我々は、粒径の揃ったサブミクロンサイズのシリカ微粒子のアモルファス集合体を調製することで、鮮やかで角度依存性のない構造色を示す顔料とするために、簡単な方法で再現よく調製することを目的に、スプレー法を利用した。さらに、微粒子のアモルファス集合体に生じる可視光の全波長領域に渡る散乱を抑えるため、黒色微粒子の添加を行った。その結果、黒色微粒子の添加量を変えることで様々な発色化が実現でき、照明の下で観測される構造色には角度依存性が見られないこともわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
白色微粒子と黒色微粒子の混合によりなぜ彩度の高い色が発現するのかという疑問を既に明らかにしたことから、研究は当初考えていた計画以上に進展していると言える。それに加えて、様々な構造発色性生物のナノ構造と発色性との関係を知る上でも重要な知見が見いだされたことから、我々が取り組む材料の研究の範疇を超えて、バイオロジーの研究にも貢献できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
白色微粒子と黒色微粒子から形成されるアモルファス集合体の発色メカニズムが明らかになってきたので、本年度はその機能化に取り組む。まずは、コロイド微粒子が形成する二次粒子の集合状態の制御と黒色微粒子の添加によって、様々な発色性を示す機能性顔料の調製を行う。二次粒子化により、センサーやディスプレイなどの色材素子への利用が可能になると考えられる。また、二次粒子の半分が黒、半分が彩度の高い色を示すヤヌス型の構造発色性素子も構築する。このようなヤヌス型微粒子が外場によって、反転できるような系となれば、簡易ディスプレイとしての利用が可能になるに違いない。
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