2013 Fiscal Year Annual Research Report
高分解光学観察による氷結晶表面での疑似液体層の動的挙動の解明
Project/Area Number |
23246001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐崎 元 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60261509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 義純 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20113623)
長嶋 剣 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60436079)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 氷 / 表面融解 / 擬似液体層 / 単位ステップ / 高分解光学顕微法 / ラマン分光法 / 原子間力顕微法 |
Research Abstract |
平成25年度は,麻川明俊博士を博士研究員として雇用し,研究分担者と協力して,下記の2点を押し進めた. 1)擬似液体層の生成に及ぼす界面自由エネルギーの役割: 平成24年度には,格子欠陥に基づく歪みが擬似液体層の生成を促進することを報告したが,界面自由エネルギーが同様の効果を及ぼすことを見出した.氷結晶ベーサル面上で生成した液滴状擬似液体層(α相)の直径が数10μm以上になると,ベーサル面とα相の界面から薄膜状擬似液体層(β相)が自発的に生成することがわかった.この結果は,ベーサル面-α相界面の自由エネルギーよりも,α相-β相界面およびβ相-ベーサル面界面の自由エネルギーの和の方が小さいことを示す.このことより,β相はα相と氷ベーサル面の中間の構造を有することが強く示唆された. 2)渦巻ステップの構造について: 氷結晶は主にうずまき成長機構によって生成するが(確率90%),渦巻ステップの構造については全く知見がなかった.そこで,渦巻ステップと高さが既知の2次元島ステップ(ベーサル面・プリズム面共にバイレイヤー1層高さ:確率10%)の衝突合体を直接光学観察した.その結果,渦巻ステップを形成するらせん転位のバーガースベクトルはバイレイヤー2層高さであるが,渦巻ステップは成長するに伴い,バイレイヤー1層高さの等価な2本のステップに分離することを見出した.この成長に伴う渦巻ステップの分離は,-15℃では徐々に進行するが,融点直下では成長後すぐさま進行することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,これまで未解明であった氷結晶の表面融解および氷結晶表面での相転移現象について様々な現象を新たに発見することに成功しており,全体的にはおおむね順調に進展していると評価できる.しかし,下記の2点については未だ実現できておらず,最終年度に持ち越した. 1)擬似液体層のラマン分光:本件については,初年度にラマン分光器を作製しておきながら,本格的に本テーマに取りかかる前に他の優先事項が発生したため,まだ取りかかれていない.しかし,技術的困難は全く無いため,最終年度にはなんとかものにしたい. 2)原子間力顕微鏡によるその場観察:平成24-25年度に本テーマを進めて来たが,温度変化に伴う試料のドリフトや,カンチレバー先端も含めた厳密な温度管理が困難であるため,まだ実現していない.しかし,最終年度にも高度に挑戦的な課題として取り組みたい.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も,麻川明俊博士を博士研究員として雇用し(平成24年度より継続雇用),研究分担者と協力し,下記の4点の研究に取り組む. 1)プリズム面の表面融解:ベーサル面とともに,氷結晶のもう一つの重要な低指数面であるプリズム面の表面融解がどのように進行するのかについては,まだ全く直接観察が行われていない.昇温に伴い,プリズム面が表面融解するよりも前に,-1.7℃付近でサーマルラフニングしてしまうことがその理由である.しかし,サーマルラフニングは5時間程度の時間スケールを有する比較的に遅い現象であるので,低温から融点直下まで急速に昇温することで,プリズム面上での擬似液体層の可視化に挑む. 2)単位ステップの成長カイネティクス:平成25年度の研究で,分離後の渦巻ステップがバイレイヤー1層高さを有することがわかったが,その成長カイネティクスについては不明なままである.そのため,温度と過飽和度が既知の状態下で単位渦巻ステップの成長速度を測定し,成長カイネティクスの過飽和度依存性を明らかにしたい.真空下での気相成長の場合には,結晶表面上での拡散がカイネティクスを支配することがこれまでに報告されている.水蒸気の体積拡散が問題となるような「濃厚気相環境下」ではどのような因子が成長を支配するのかは,産業的にも重要な課題である. 3)擬似液体層のラマン分光:本件については,技術的困難は全く無いため,最終年度にはなんとかものにしたい. 4)原子間力顕微鏡によるその場観察:様々な技術的困難が発生したためにまだ実現していないが,最終年度にも高度に挑戦的な課題として取り組みたい.
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