2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間ひずみ場制御による新規イオン伝導性固体の創製と燃料電池反応促進
Project/Area Number |
23246020
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
湯上 浩雄 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60192803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 史匡 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00361113)
雨澤 浩史 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 准教授 (90263136)
佐藤 一永 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (50422077)
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Keywords | マイクロSOFC / プロトン導電体 / 物理的気相成長法 / 薄膜 / 残留応力 / 界面応力 / 酸素欠陥 |
Research Abstract |
本研究ではセラミックス内部にナノスケールでひずみ場を導入し結晶構造やバンド構造,電子密度分布などの電子構造を制御することで燃料電池反応が飛躍的に進行する新しいセラミックスを創製し,その技術をμ-SOFCに転用することを目的としている。今年度はイットリア添加バリウムジルコネート(BZY)を用いたμ-SOFC内部におけるひずみ場の基本的な知見を得ることを目的としてパルスレーザ堆積法を用いたBZY薄膜の作製と,そのひずみ場制御を行った。パルスレーザ堆積法で作製したBZY薄膜の格子体積は作製直後は大きく,酸素存在雰囲気下でアニールすると最大で1%収縮した。酸素雰囲気下でこの収縮量が多くなるため,このような体積変化は製膜直後の薄膜は通常のBZYより多くの酸素欠陥を内包しており,実質的には還元膨張した形となっていることを意味している。この結果は,ナノ空間ひずみ場を導入する以前にBZY薄膜の格子体積はバルクのセラミックスとは異なっていることを示唆しており,この状態における特性の評価がまず必要であることが明らかになった。薄膜の作製条件,基板の種類により結晶構造は若干異なることも合わせて分かったため,次年度にはこれらの試料の導電特性評価とX線吸収等を用いた電子構造の評価も合わせて行う予定である。 またμ-SOFCの燃料電池反応の大部分を支配する電極反応抵抗についても合わせて検討を行った。通常のμ-SOFCでは昇温中に電極反応抵抗の大きな変化がしばしば観察されるのに対して,バルクのセラミックス上では電極反応抵抗は昇温中でも大きな変化を示さなかった。この結果は前述した薄膜の格子体積の変化が電極反応抵抗に大きな影響を与えていることを示唆しており,次年度により詳細に評価する必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来今年度は動的なひずみ場を制御可能な機構の設計,試作まで行う予定であったが,作製プロセスの大半を行うマイクロナノマシニングセンターが被災から復旧するのに想定より多くの時間を費やし,動的なひずみ場制御機構の試作までは至らなかった。施設はほぼ復旧しているので次年度前半には試作を完了させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により,まず薄膜自体の格子体積がバルクのセラミックスと異なりその評価をすることが必要であることが明らかになった。そこで次年度はX線吸収などを用いて薄膜自体の電子構造の評価を行うと共に,ひずみ場制御機構を組み込んだμ-SOFCを試作し動的にひずみ場を変化させた状態における特性評価も実施していきたい。
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