2013 Fiscal Year Annual Research Report
原子論に基づく材料の有限温度長時間変形の理論体系の創出
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23246025
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾方 成信 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20273584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
君塚 肇 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60467511)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 塑性変形 / 原子論 / 有限温度 / 長時間 / 転位 / 拡散 / 多結晶 / 加速分子動力学法 |
Research Abstract |
(1) エントロピー効果の明確化 これまでの解析において、結晶粒のサイズを数十ナノまで段階的に変化させながらの原子レベルのクリープ変形解析、塑性変形解析結果に基づいて、原子レベルの有限温度でのクリープ変形理論および塑性変形理論変形理論に対して結晶粒のサイズ依存性の因子を導入し、理論の材料スケール依存性に対する展開を行い、その過程でクリープ変形のエントロピー効果が重要であることが判明していたので、本年度は活性化エントロピーを分子動力学計算を用いて精度よく求める手法を開発して、活性化エントロピーに関して定量的な評価を実施した。その結果、多結晶体のクリープ変形において、活性化エントロピーと活性化エンタルピーの間に線形相関があるとするMeyer-Neldel則が成り立っていることを発見した。 (2)原子拡散と塑性変形の原子レベルでの解明 これまでの研究で、クリープ変形は多分に原子拡散がその支配因子となっていることが判明しているが、原子拡散現象の詳細とその外部応力による影響、転位などの結晶欠陥との相互作用については原子レベルから十分に明らかになっていなかった。そこで、結晶粒内で起こる転位と不純物元素との動的な長時間相互作用挙動を加速分子動力学を用いて解析した。その結果、不純物元素の転位中の拡散経路についてこれまでの常識を覆す新たな知見を得た。また、分子動力学計算を用いて粒界における粒界拡散についてさらに深く検討し、粒界拡散の活性化体積の評価から、粒界拡散が自由体積の拡散によって支配されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたエントロピー効果の明確化は分子動力学計算を用いた定量的評価までを目標としていたが、それを達成するだけでなく活性化エントロピーとエンタルピーの間にある関係を新たに見出すまでに至っている。また、不純物元素の転位中拡散の解析を実施するだけでなく、転位中拡散経路に関してこれまでにない不変的知見を得るに至っており、これらを総合して当初計画より進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、長時間クリープ変形に関して、粒界拡散、粒内不純物拡散、これらと転位との相互作用について詳細な解析を実施してきた。また、その結晶粒サイズ依存性などを明らかにしてきた。しかし、有限温度、長時間の多結晶体の変形を考えるにあたっては、粒界移動およびすべりに関する知見が不可欠である。これらは、結晶粒の形やサイズの時間変化を引き起こし、ひいては力学的特性の時間変化を引き起こす。そこで、今後は結晶粒界の移動やすべりに関して、加速分子動力学法などを用いて、エネルギー論、原子論の観点からそのメカニズムの詳細を獲得する。
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