2011 Fiscal Year Annual Research Report
その場観察・解析ナノメカニカルラボによるナノ薄膜の破壊機構と寸法効果の解明
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23246026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
箕島 弘二 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50174107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平方 寛之 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (40362454)
米津 明生 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40398566)
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Keywords | マイクロ材料力学 / 薄膜 / 破壊 / 強度 |
Research Abstract |
本研究では,厚さが10nm~100nmオーダーの金属薄膜(ナノ薄膜)を対象として,制御された力学的負荷条件下において,き裂先端などの応力集中場における変形・破壊のその場観察と微視的構造解析が可能となるその場観察・解析ナノメカニカルラボを開発し,これを基に実験・観察・解析による破壊機構の解明を通じて,ナノ薄膜の強度の支配力学を明らかにすることを目的とする。ここでは,基本的な強度・破壊じん性のみならず,クリープ強度や疲労強度における寸法効果を,微視的な変形・破壊機構に着目して解明する。 本年度は,薄膜の破壊過程のその場観察と微視的構造解析が可能となるその場観察・解析ナノメカニカルラボの開発に着手し,電子顕微鏡を核としたその場観察システムを開発・導入した。本システムは,高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)と微細結晶構造解析装置(EBSD装置)を組合せたものであり,これによりナノ薄膜の形態と結晶構造の解析が可能になった。さらに,本システム内で稼働させる薄膜用力学実験装置の設計を行った。 一方,膜厚以外の縦・横寸法をmmオーダーまでの任意の寸法とした自立ナノ薄膜試験片の作製技術を確立するとともに,銅ナノ薄膜試験片に対する引張試験,破壊じん性試験,および疲労き裂進展試験を実施し,薄膜の機械的特性に及ぼす膜厚の影響に関する基礎的な検討を実施した。その結果,厚さ100nm~800nmの銅薄膜の破壊じん性には膜厚効果が存在し,膜厚の低下にともないじん性が低下することを明らかにした。また,厚さ500nmの銅薄膜では,疲労負荷によりき裂が進展し,疲労き裂進展に応力比効果が見られることを明らかにした。なお,この成果は高い評価を受け,日本機械学会M&M材料力学カンファレンスにおいて優秀講演表彰を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
.本年度に計画していた(1)その場観察・解析ナノメカニカルラボの開発,(2)自立ナノ薄膜の作製,および(3)ナノ薄膜の基本特性評価,について交付申請書の計画通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に設計したその場観察力学実験装置を製作し,FE-SEM観察およびEBSD解析下において,ナノ薄膜に対するき裂進展試験や疲労き裂進展試験を実施する。これによって,破壊じん性の膜厚効果の発現機構,および疲労き裂進展機構を解明するとともに,その支配力学について検討する。また,表面酸化膜を生じない金ナノ薄膜に対する評価実験を実施し,銅ナノ薄膜の結果と比較検討することにより表面効果の解明を行う。さらに,高温環境下における実験手法を確立し,アルミニウムナノ薄膜に対するクリープ試験やクリープき裂伝ぱ試験を実施し,その膜厚効果について検討する。
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