2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノメートル厚さの潤滑膜を用いた薄膜潤滑現象の多角的計測
Project/Area Number |
23246031
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福澤 健二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60324448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 伸太郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50377826)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 潤滑 / マイクロ・ナノトライボロジー / 粘弾性計測 / 極微量潤滑 / 水晶振動子 / エリプソメトリー顕微鏡 / ハードディスク / マイクロマシン |
Research Abstract |
微小機械の潤滑や極微量潤滑において重要な,摺動面にのみ液体潤滑膜を塗布する潤滑(薄膜潤滑)が重要となっている.これには,高精度にすきま制御した条件で潤滑膜の発生する水平・鉛直方向の力の計測が必須である.さらに,潤滑膜の変形をリアルタイムに把握することが求められる.力学応答計測では発生力減小に対応して高感度化が必要であり,膜観測では摺動部微小化に対応して面内分解能を向上する必要がある.本研究では,課題を克服する新規な計測法を提案し,潤滑膜の発生する水平力・鉛直力および膜変形を同時計測し,薄膜潤滑の理論基盤を構築することを目的としている. 今期は,各計測法の改良と各計測法の統合に向けた検討を進めた.計測法の改良としては,鉛直力測定用の水晶振動子型音叉センサについて,振動梁の微細化と検出系のSN比の向上による高感度化を試み,ねらいとしていた力検出限界0.1μN以下の達成にめどをつけた.圧電検出に加えレーザドップラー振動計による検出を試みたが,圧電検出の感度を上回るには至らなかった.また,膜観測系については,照明用光学系の改良によりnm厚さの膜観測に必要な0.1nmオーダの膜厚分解能を達成した.さらに,各計測法の統合に向けた系としては,水平力・鉛直力測定系を統合した系および水平力測定系と膜分布観測系の統合を検討した.水平力・鉛直力測定系を統合した系としては,光ファイバプローブと音叉型センサを組み合わせ,水平力と鉛直力を計測可能な系を試作したが,水平力測定プローブの水平方向の振動が鉛直方向のすきま変動を誘起することが見出された.また,水平力測定系と膜分布観測系を統合した系としては,水平方向に加振した光ファイバプローブを潤滑薄膜に接触させ,その際の膜変形を計測可能な系を試作し,ストロボ観測可能なことを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今期は,各計測法の改良と各計測法の統合にむけた検討を行った.計測法の改良としては,鉛直力測定用の水晶振動子型音叉センサについて,本研究で提案した音叉梁の微細化と検出系のSN比の向上により,ねらいとした力検出限界0.1μN以下の達成にめどをつけ,高感度化に成功した.また,膜観測系についても,照明用光学系の改良によりnm厚さの膜観測に必要な0.1nmオーダの膜厚分解能を達成した.各計測法の統合に向けた系として,水平力・鉛直力測定系を統合した系および水平力測定系と膜分布観測系の統合を検討した.水平力・鉛直力測定系を統合した系として,水平力検出用の光ファイバプローブと音叉型センサを組み合わせ,水平力と鉛直力を計測可能な系を構築し課題抽出した.そして,光ファイバプローブの水平方向振動が鉛直方向のすきま変動を誘起する課題を明らかにした.これに関しては,センサの構造を改良することで対応可能と考えられる.また,水平力測定系と膜分布観測系を統合した系としては,本研究で提案した加振した光ファイバプローブを潤滑薄膜に接触させ,その際の膜変形をストロボ観察により計測可能であることを実験的に確認し,原理確認に成功した.以上,本研究の中心となる研究項目について,ねらいとしていた目標にめどをつけることができ,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究方針にしたがって研究を進める.今後は,各計測法の改良と各計測法の統合,さらに薄膜潤滑現象のモデル構築に向けた以下の検討を進める. (1)各計測法の改良:これまでの研究で明らかになってきた各計測法の改良を行う.高精度なすきま制御と高感度力検出の両立を念頭に各測定系を改良する. (2)各計測法の統合:各計測法の統合に向けた系としては,水平力・鉛直力測定系を統合した系および水平力測定系と膜分布観測系の統合を引き続き検討する.水平力・鉛直力測定系では,水平力測定用の光ファイバプローブの振動がすきま変動を誘起する課題が見出された.水平力測定用プローブと鉛直力センサを一体化したこれまでの測定系の構造の見直しを含め,高精度なすきま制御と高感度力検出を両立させる統合測定系の構築を検討する.また,水平力測定系と膜分布観測系の統合系については,摺動時の膜変形観測に向け,ストロボ観測系と光ファイバプローブを用いた水平力測定系との統合系の改良を進める. (3)薄膜潤滑現象のモデル構築:上記の(1)および(2)で得られる結果と従来の潤滑理論とを比較し,薄膜潤滑現象モデル化のための基盤的知見を得る.
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