2012 Fiscal Year Annual Research Report
熱流動非線形ラマン散乱イメージング法構築による異相界面分子吸着現象の非侵襲解明
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23246037
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 洋平 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00344127)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非線形ラマン散乱 / 熱流動非侵襲センシング / 自発ラマン散乱 / CARS / ラマンイメージング / 熱流動多変量分布 / 校正曲線 / エバネッセント波 |
Research Abstract |
熱流動異相界面における分子吸着や反応・分離を支配するイオン層電位形成メカニズムの解明を目的とした、非線形ラマン散乱イメージング法の開発を、4ヶ年に渡り行う。本年度の研究成果を下記に述べる。 ①二波長ラマンイメージングによるチャネル流非定常温度場非侵襲センシング法の開発:水の温度変化に応じて、3,419 cm-1以下(水素結合したOH基が振動している領域)ではラマン散乱光強度が減少し、3,419 cm-1以上(水素結合の切れたOH基が振動している領域)では増加していることから、それぞれのラマンシフト(波長)に合致したフィルタを選定し、2台のEM-CCDカメラに装着することにより、二波長ラマンイメージング法の開発を行った。T字型チャネル内ジャンクション部における温度混合場の非定常現象を空間分解能6.2 × 6.2 ミクロンおよび温度分解能2.0 Kを有する非侵襲センシングを実現した。 ②非線形ラマン散乱を用いた電解質溶液中多種イオン群濃度非侵襲センシング法の開発:チャネル内イオン群からのラマン散乱光を増大したコヒーレント・アンチストークスラマン散乱(CARS)光による、イオン群濃度変化に応じたCARS光強度変化を定量的に示す校正曲線の取得し、2種のイオン群濃度の非侵襲センシング法の開発を行った。励起光の揺らぎ等の散乱光強度への影響を除去するため、顕微鏡およびイメージインテンシファィア付CMOSカメラから構成されるシステムを2セット構築し、参照散乱光強度との相対強度を求める画期的なシステムの開発に成功した。 ③エバネッセント波照射自発ラマンイメージング法による固液界面極近傍のイオン濃度非侵襲計測:励起光としてエバネッセント波を用いることにより、固体・液体界面極近傍に存在するイオン群濃度のセンシング法を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自発ラマン散乱およびコヒーレント・アンチストークスラマン散乱の特徴に特化したセンシング法として下記の3システムの提案を行い、完全非侵襲熱流動センシングに成功し、異相界面における熱流動現象の解明の進捗状況は概ね良好である。 ①二波長ラマンイメージングによるチャネル流非定常温度場非侵襲センシング法の開発:温度場非定常現象の解明が可能となった。 ②非線形ラマン散乱を用いた電解質溶液中多種イオン群濃度非侵襲センシング法の開発:バルクイオン群濃度とラマン散乱光強度との相関関係が明らかとなった。 ③エバネッセント波照射自発ラマンイメージング法による固液界面極近傍のイオン濃度非侵襲センシング法の開発:固体・液体界面極近傍に存在するイオン群濃度とラマン散乱光強度との相関関係が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
熱流動異相界面における分子吸着や反応・分離を支配するイオン層電位形成メカニズムの解明を目指して、固体・液体および液体・液体界面へのエバネッセント波照射による自発ラマン散乱および非線形ラマン散乱に基づくラマンイメージング法の開発を行う。異相界面におけるイオン群挙動を支配する多変量時空間分布の非侵襲センシングを実現し、マイクロチャネル内熱流動のバルク時空間スケールとイオン層電位形成に関する時空間スケールとの物理的関係を明らかにし、分子吸着現象を支配する時空間スケールを特定し、熱流体力学観点からメカニズムの解明を行う。具体的には、石英カバーガラスを用いてマイクロチャネルを作成するため、通常、チャネル壁面(石英ガラス)は負極に帯電する。電解質溶液中の陽イオンがクーロン力によって壁面に引き付けられイオン層(固定層と拡散層から成る電気二重層)を形成し、拡散層内の陽イオン及び陰イオン濃度の変化により、イオン層電位が変化する。マイクロチャネル流を支配する時間スケールは、代表長さおよび代表速度より約10 msと見積もられ、また、イオン層形成の時間スケールは、研究代表者が現在までに行った実験結果により、デバイ長およびイオン群代表速度より約1 msと見積もることができる。イオン層の空間スケールであるデバイ長は、ボルツマン分布則に基づき定義されるが、イオン層電位は対流と拡散に支配されていることが研究代表者の一連の研究で明らかとなった。即ち、イオン層電位形成の時間スケールは1~10 msの間であることが推測できるので、陽イオン及び陰イオン濃度を変化させ、熱流体力学的に電位形成を支配する時間スケールの特定を行う。
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Research Products
(8 results)