2012 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイドをテンプレートとした固相グラフェンナノリボンの創出とデバイス応用
Project/Area Number |
23246063
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤田 淳一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10361320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 洋一 筑波大学, 数理物質系, 助教 (20435598)
白木 賢太郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90334797)
村上 勝久 筑波大学, 数理物質系, 助教 (20403123)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | グラフェン / アミロイド「 / 固相反応 / ナノリボン / FET |
Research Abstract |
本年度の研究は主として(1)アミロイド高分子合成技術の精密化と(2)アミロイド高分子をテンプレートとした固相グラフェン成長メカニズムの解明、およびグラフェンナノリボン(GNR)合成に注力して研究を推進した。 まず、(1)アミロイド高分子合成技術の精密化においては、GNRのテンプレートに適する形状のアミロイド線維を得る必要がある。特に本年度は、アミロイド線維形成初期過程をの理解と制御に注力し、その合成条件の最適化を行った。さらに、タンパク質のアミロイド繊維化初期段階に形成される最小線維であるプロトフィブリルの抽出法を見いだし、従来十分に解明されてこなかったアミロイド線維形成過程を詳細に理解することが出来た。特にアミロイドの合成では溶液のpHと温度が、アミロイド線維の形状のアスペクト比に重要であることが明らかになり、合成条件の最適化で5マイクロメートル以上の長さを持ち幅が7ナノメートル程度のアミロイド線維を、再現性良く作り出すことに成功した。 次に(2) アミロイド高分子をテンプレートとした固相グラフェン成長メカニズムの解明においては、液相Gaの最表面約4nm程度の領域に50at%に達する非常に高濃度の炭素固溶層が存在する事を見出した。この表面炭素固溶層からグラフェンが析出してアモルファス炭素とGaの界面にグラフェンが成長する事を見出した。また、サファイヤ基板上に配置したアミロイド高分子を炭化後に液体Gaで被覆し、固液界面での触媒作用で単層GNRを合成する事に成功した。合成されたGNRはテンプレートとなるアミロイドの形状を良く反映し、幅5~7nm長さ数ミクロンのGNRであった。大半のGNRは単層もしくは2層のGNRとなっている。これらのサファイヤ基板上のGNRはPMMA膜を用いてSiO2酸化膜上に転写できることを実証できた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は下記の3つの研究目標を掲げて研究を推進している。 (1)アミロイド高分子合成技術の精密化、(2)アミロイド高分子をテンプレートとした固相グラフェン成長メカニズムの解明、(3)GNR-FETの構築と局所電気伝導特性の解明、である。 このうち、(1)アミロイドの合成については、ほぼ目標通りの合成技術を達成するとともに、アミロイド線維が合成される途中のプロトフィブリルの成長過程に関する詳細なデータが得られ、蛋白バイオ領域においても価値ある成果が得られた。本研究で必要とされるアミロイド合成技術がほぼ確立できたことで、この目標(1)はほぼ達成できたといえるが、さらなる合成条件の精密化と高品位試料の供給を行って行く。 さらに、(2)の固相グラフェン成長メカニズムにおいては、高度なin-situ TEM技術を駆使してグラフェン合成のその場観察に成功した。本来炭素を固溶しないはずのGaであるが、その最表面では高濃度炭素固溶領域が形成され、ここからグラフェンが析出していく事を見出した。この原理に基づき、アミロイド蛋白をテンプレートとしたGNR合成にも成功した。合成されたGNRは単層もしくは2層GNRであり、テンプレートの形状を良く反映して、最も細い物で5nm程度、また長さは5ミクロンに達する。これらのGNRは、低温でGa固化させて解離する技術を開発したことによって、デバイス測定が可能なレベルでの清浄なGNRを得る事ができるようになった。さらに、PMMAを用いたGNRの剥離と転写技術もほぼ確立でき、現在(3)GNR-FETの動作特性の解明と局所と電気伝導特性を鋭意継続中である。本研究は初年度に東日本大震災の影響で半年ほどの研究の中断を余儀なくされたものの、2年間経過段階ではほぼ計画通りに順調に研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題(1)アミロイド高分子合成技術の精密化ならびに、(2)アミロイド高分子をテンプレートとした固相グラフェン成長メカニズムの解明、については、ほぼ予定通りに研究が進展している。今年度は、アミロイド合成の精密化をさらに進展させ、さらなる高品位アミロイドの合成と供給を進めるとともに、プロトフィブリルの単一の線維を用いた究極の極細GNRテンプレートの合成とGNR-FETの実現に向けて研究を発展させていく。 また、超高真空STMを用いたGNRエッジや欠陥の解析を進め、サファイヤ上でのGNRヘテロエピタキシャル成長に関する知見を深めていく。また、基板結晶格子とGNR格子との整合関係、格子歪み緩和、グラフェン面内での欠陥や粒界の形成と成長過程、多層グラフェンの析出過程と固相反応メカニズムを解明していく。さらに(3)GNR-FETの構築と局所電気伝導特性の解明においては、Si清浄基板上へ転写したGNRの高分解能STSを行い、バック型およびトップ型FET特性の評価を調べていく。さらに、コンダクティブAFMを用いた GNRの局所電気特性、特にエッジ部での導電特性を解明していく。特に、GNR内部とエッジの局所電子状態はグラフェンエレクトロニクスの中核を担う基礎物性である、このGNR局所電子状態解明に注力していく。同時に電極材料とGNR間のショットキーバリアの形成とGNR伝導特性との相関ついても詳細に調べていく。
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Research Products
(19 results)