2011 Fiscal Year Annual Research Report
ポンプ-プローブレーザーテラヘルツ放射顕微鏡の開発と超高速電子デバイス材料の探索
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23246066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 博成 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 准教授 (30219901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川山 巌 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教 (10332264)
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Keywords | 近接場光 / テラヘルツ / 超高速デバイス / キャリアダイナミクス / フェムト秒レーザー |
Research Abstract |
今年度は、近接場光励起型ポンプ-プローブレーザーテラヘルツ放射顕微鏡(LTEM)の構築に先立ち、(1)ガルバノメータを使った光スキカン方式のポンプ-プローブLTEMの構築を行い、実際に半導体光伝導スイッチ(低温成長GaAsデバイスおよび半絶縁性GaAsデバイス)の評価を行った。また近接場光励起型システムでは光ファイバを使用したコンパクトなシステムの構築も計画しており、フェムト秒レーザーがファイバ中を通過することにより生じる分散や偏光状態に及ぼす影響などを詳細に調べるため(2)ファイバ結合型テラヘルツ分光システムの構築を行い、その評価を行った。 (1)光スキャン方式のポンプ-プローブLTEMを使った実験では、ポンプ光をパワー数10mW、ビーム径φ5μm程度で光伝導スイッチ部に固定照射し、プローブ光をパワー1mW、ビーム径φ1μm程度でガルバノメータを使って走査しながら、ポンプとプローブ光を照射する時間差を変化させて観測を行った。この結果、イメージとしては、空間分解能がプローブ光のビーム径と同じ1μm程度のものが得られ、次年度導入予定のφ数100nm程度の孔付きカンチレバーを使ってプローブ光を近接場光として照射することにより、当初予想していた数100nm程度の空間分解能が達成できる見通しがついた。またこの観察では、GaAs内でポンプ光によって励起された電子、正孔群が空間電場を遮蔽する現象や、その緩和現象がそれぞれの材料に特有の励起キャリアの寿命や移動度によって違いを見せる等、サブピコ秒時間スケールでのキャリアのダイナミクスな挙動の違いを観察した。 (2)ファイバ結合型のテラヘルツ分光システムを使った実験では、ファイバに入射するフェムト秒レーザーパルスの分散や偏光状態の変化、またこの変化の様子がファイバの引き回し状態によっても変わることが判明し、またこの分散の影響により放射されるテラヘルツ電磁波の帯域も狭くなってしまうことが判明した。これら得られた結果を元に今後最適な近接場光励起型システムの構築を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初、近接場光用スキャンコントロールユニットを早い時期に購入して、孔付きカンチレバーを使った近接場光の導入を予定していたが、予算の交付が一部遅れたため、この設備の納品が年度末となった。このため、近接場光を導入するにあたり、最適なシステムの構築を行う上でベースとなるデータの取得に努めた。この結果、ポンプ-プローブ照射時に観測される基本特性の取得や、従来から行ってきたファイバプローブタイプのLTEMシステムにおけるいくつかの問題点も判明するなど、今後近接場光励起型のポンプ-プローブレーザーテラヘルツ放射顕微鏡を構築していく上で基本となる有益な情報が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度購入した近接場光用スキャンコントロールユニット(ユニソク製)および波長800nmのMaitaiフェムト秒レーザー(Spectra Physics製)を使って、近接場光励起型ポンプ-プローブLTEMめ構築を行う。まずLTEMとしての性能評価後、ポンプ光の導入を行い半導体光スイッチ材料などのポンプ-プローブレーザーテラヘルツ放射特性の測定を開始する。 この近接場光励起タイプでは発生するテラヘルツ電磁波の強度もかなり弱くなってしまうことが予想され、近接場光発生用の孔付きカンチレバーは、孔径が500nm程度のものからスタートし、光学的なアラインメントが最適化された状態で孔径の小さなものへと変え、空間分解能の向上を図る。 また、テラヘルツ電磁波の検出にあたっては、様々な試料に対応できるよう、反射モードでの検出系および透過モードでの検出系を構築し、それぞれの性能について評価を行う。
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Research Products
(7 results)