2012 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動による東南アジアの河川流量変化顕著域の検出とその影響評価・適応について
Project/Area Number |
23246089
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立川 康人 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40227088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIM Sunmin 京都大学, 防災研究所, 講師 (10546013)
椎葉 充晴 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90026352)
萬 和明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90554212)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 気候変動 / 東南アジア / 水災害 / 洪水 / 渇水 / 水資源 / 適応 |
Research Abstract |
1)気候推計情報のダウンスケーリング手法の開発:気候推計情報に含まれる降水データのバイアス補正とダウンスケーリングを同時に実施する手法を検討した。気象研究所による60km空間分解能のGCMをAPHRODITEの日観測降水データを用いて20km空間分解能にする分解する手法として3種類のアルゴリズムを開発し、それらの性能を比較・検討した。その結果、降雨データの空間相関情報を用いたダウンスケーリング手法が、夏期の日スケールでの降水量の再現性が高いことが分かった。 2)気候変動による東南アジアの河川流量変化顕著域の診断:インドシナ半島全体を対象とする約10km空間分解能の河道流追跡モデルを構築した。次に、気象研究所のMRI-AGCM3.2Sの出力データを用いて90年間の流量計算を実施し、年流量、年最大流量、年最小流量の変化やT年確率流量の変化を分析した。この結果から、特にイラワジ川流域でもっとも顕著な流量変化があることを見出した。また、タイ国チャオプラヤ川全域の約20km分解能流出モデルおよび1km空間分解能の河道流追跡モデルを開発し、2011年大洪水をはじめとして、既往の大洪水を再現できるようにモデルパラメータを同定した。 3)変化顕著流域を対象とする詳細分布型流出モデルの構築と河川流量の詳細分析:気象研究所のMRI-AGCM3.1Sを用いたチャオプラヤ川全域の流量シミュレーションにより、チャオプラヤ川東支川のパサック川の流量が減少する可能性が明らかとなったため、パサック川流域を対象とする約500m空間分解能の詳細分布型流出モデルを構成し、計算したダム流入量を補正してダム貯水量の将来変化を分析した。 4)温暖化時の流量変化が治水・利水・食料生産に及ぼす影響の分析:水稲を対象に、作物成長モデルと陸面水文過程モデルSiBUCを組み合わせた結合モデルを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通りに進展している。平成24年度は気候推計情報を河川流量に翻訳する河川流量モデルが完成した。次に、気象研究所のMRI-AGCM3.2Sの出力データを用いて90年間の流量計算を実施し、年流量、年最大流量、年最小流量の変化やT年確率流量の変化を分析した。この結果、特にイラワジ川流域や紅河で顕著な流量変化があることを見出した。これらの分析結果を用いて河川流量変化マップを作成した。また、東南アジアの流量変化顕著域として、タイ国パサック川を対象とする詳細分布型モデルを構築し、ダム貯水量の将来変化を分析した。また、降水のダウンスケーリング手法や作物モデルと陸面過程モデルの結合モデルも構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)気候推計情報のダウンスケーリング手法の開発:気候推計情報に含まれる降水データをダウンスケーリングし、かつバイアスを補正する確率・統計的手法の開発を継続する。次に、それらを用いた降水データを作成して、河川流量のアンサンブル予測を実現する。また、降水データの変化の非定常性を考慮した確率水文量の推定手法を開発する。 2) 気候変動による東南アジアの河川流量変化顕著域の診断:複数のGCM出力を用い、平成24年度に開発した河川流量追跡モデルを利用して、同様の河川流量シミュレーションとデータ分析進める。また、河川流量の将来変化が統計的に有意であるかどうかを分析する。また、2011年に大洪水が発生したチャオプラヤ川については、全流域を対象とする1km分解能の河川流量追跡モデルを用い、複数GCMによる将来流出予測計算を実施する。また、得られた結果をもとに適応策を検討する。 3)変化顕著流域を対象とする詳細分布型流出モデルの構築と河川流量の詳細分析:平成24年度に実施したインドシナ半島全体を対象とした流量シミュレーションにより、イラワジ川流域でもっとも顕著な流量変化があることを見出した。そこで、イラワジ川を含む1km分解能分布型流出モデルを構築し、複数の温暖化気候推計情報を用いて流量シミュレーションを実施する。また、沿岸下流域を対象とする氾濫モデルの開発に着手する。 4)温暖化時の流量変化が治水・利水・食料生産に及ぼす影響の分析:2)3)の結果をもとに、統計的な有意性を考慮したうえで、洪水リスクおよび渇水リスクの変化を示す空間分布図を作成する。また、2)で構築した河川流量追跡モデルに陸面家庭モデルと植物成長モデルを組み合わせた一体型シミュレーションモデルを構築する。
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Research Products
(18 results)