2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23246097
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑村 仁 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20234635)
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Keywords | 鋼構造 / 座屈 / 破壊 / 塑性変形能力 / 耐震設計 |
Research Abstract |
当初交付申請書に記載した研究実施計画に基づき、山形断面筋かいの圧縮・引張繰返し実験をスタートし、座屈と破壊の連成現象を再現したが、2つの問題があることが判明した。一つは、支持点の境界条件が明確でない(特に偏心の大きさが精確に検出できない)こと。もう一つは、塑性履歴の数理モデルの選択肢が多く、どれが適切であるかが明確でないことである。この二つの不確定要因のため、実験結果を精確に数値シミュレーションできないという事態となった。そこで、鋼材の繰返し塑性履歴モデルの検証を先に行っておく必要があると判断し、材質および境界条件が明確な砂時計型丸棒の繰返し実験を様々な履歴パターンで実施し、有望と思われるいくつかの履歴モデルを選出して、どれが最も精確に実験結果を追跡できるかを検証した。 実験: 予ひずみなし8ケース(単調引張1、単調圧縮1、ランダム振幅6) 予ひずみあり4ケース(単調引張1、単調圧縮1、ランダム振幅2) シミュレーションに用いた塑性履歴モデル: (1)Pragerモデル,(2)Chabocheモデル,(3)Yoshida-Uemoriモデル その結果、等方硬化と移動硬化を適切に組み合わせれば、ChabocheモデルとYoshida-Uemoriモデルがともに、非常に大きな塑性ひずみ領域まで実験結果を追跡できることが明らかとなった。また、今回の研究により、モデルパラメータの値も明確となり、予ひずみの有無によってその数値が変わる様子も明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
塑性変形履歴を数値的に再現できる数理モデルとそのモデルパラメータを明らかにすることができたことは今後の研究にとって非常に有益であった。座屈と破壊が連成する場合は、大きな塑性変形後に亀裂が微視的な部分から発生するので、その微視的部分の応力-ひずみ状態は数値シミュレーションによってのみ知ることができるからである。座屈と破壊の連成を実験室で再現する際には、境界条件を明確にしておかないと、シミュレーションの精度に影響を与えてしまうので、今後の再現実験ではそのことについても十分な配慮が必要であることがわかったことも有益であった。
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Strategy for Future Research Activity |
座屈と破壊の連成実験では境界条件を明確にすることが大切であること、また地震被害として報告されている実態とも対応するものであることを念頭において、角形鋼管柱の座屈と破壊の連成実験を行うことにする(これは研究計画調書で提案したタイプ2のものである)。角形鋼管はわが国の建築鉄骨に非常にたくさん用いられているので、そのデータは有用である。角形鋼管は冷間成形で造られているので、部分的に予ひずみを受けている。そのようなケースでも今年度に得られたモデルパラメータが有効に適用できると考えられる。
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