Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 和典 京都大学, 工学研究科, 教授 (90198911)
河野 進 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30283493)
坂下 雅信 京都大学, 工学研究科, 助教 (50456802)
谷 昌典 独立行政法人建築研究所, 研究員 (50533973)
平島 岳夫 千葉大学, 工学研究科, 准教授 (20334170)
|
Research Abstract |
平成23年度には以下の研究を実施した。 1.コンクリートと鉄筋の高温時付着試験および付着-すべり関係のモデル化 直径150mm,高さ300mmのコンクリートシリンダー中に打設した鉄筋(φ19mm SD345)の引き抜き試験を実施した。実験パラメータは,温度(室温,100℃,200℃,300℃,400℃,500℃および600℃)である。試験時コンクリート圧縮強度は,23.9MPaであった。試験体を所定の温度までマントルヒータを使用して加熱した後,そのまま温度を維持し,鉄筋を引き抜いた。引き抜き力と抜け出し量の関係から,付着-すべり関係を得,これをfib Codeを参考にして,モデル化した。 このような高温下における付着-すべり関係のデータはほとんどなく,鉄筋コンクリート部材および構造の耐火設計を構築する上で,特に変形評価において重要となる。 2.ひび割れ幅と部材内部温度分布に注目した鉄筋コンクリート造柱梁骨組の耐火試験 鉄筋コンクリート造ト字形柱梁接合部骨組に対して,常時荷重を載荷した状態で,耐火試験を実施した。本実験では,特に,ひび割れ幅と部材内部温度分布について検討した。ト字形試験体を向かい合わせた状態でH形鋼により緊結し,下側柱,梁および柱梁接合部を加熱した。梁端には,ひとつの試験体では下方向に,もうひとつの試験体では上方向に荷重を加えた。上方向に載荷した試験体では,梁断面下側にひび割れが発生し,このひび割れを通して,鉄筋が直接火炎に曝されることになる。一方,下方向に載荷した試験体では,火炎に曝される側でコンクリートが圧縮されており,耐火被覆の役割を果たす。 ふたつの試験体の変形挙動と部材内温度分布の違いから,ひび割れ幅とその分布が耐火性能に与える影響についてのデータが得られた。このようなデータは世界的に見ても例がなく,鉄筋コンクリート造構造物の耐火性を考える上で貴重なデータとなる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画は,コンクリートと鋼材に対する熱間および冷却後載荷試験を行い,応力-ひずみ関係を得,これをモデル化すること,および,鉄筋とコンクリートとの付着試験とその結果に基づくモデル化,さらには,部材の高温時変形解析法の開発であった。これに対して,炉購入が遅れたため,コンクリートと鋼材に対する試験と応力-ひずみ関係のモデル化を平成24年度に実施することとし,付着試験と付着-すべり関係のモデル化と,平成24年度以降に実施予定であった鉄筋コンクリート造骨組試験体に対する耐火試験を平成23年度に行った。先に骨組に対する耐火試験を行うことにより,ひび割れ幅と部材内部温度分布の関係に関して,平成24年度に実施予定の実験と解析法開発に役立つ資料が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
付着-すべり関係モデルを用いて,鉄筋コンクリート造梁柱骨組の高温下における変形挙動を追跡しようと試みたが,実験結果と計算結果は大きく異なった。この原因としていくつかの項目を挙げることができるが,やはり,コンクリートと鉄筋の高温時力学挙動をより精細に把握する必要がある。平成23年度に実施予定であったコンクリートと鉄筋の高温下での試験を平成24年度に実施し,既往の研究データと併せて,より多くのデータに基づき,その応力-ひずみ関係のモデル化を検討する予定である。また,比較的耐火性の高い鉄筋コンクリート造だけでなく,本年度は高温時挙動が危惧される鉄骨造骨組についても耐火試験を実施する予定である。申請者らの研究により,骨組に荷重を加えながら耐火試験を行う方法がほぼ確立されてきており,鉄骨骨組の耐火試験にもこれを適用する予定である。
|