2012 Fiscal Year Annual Research Report
健康維持便益を統合した低炭素型居住環境評価システムの開発
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23246102
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊香賀 俊治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30302631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 旦二 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (00190190)
白石 靖幸 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (50302633)
樋野 公宏 独立行政法人建築研究所, 住宅・都市研究グループ, 研究員 (30391600)
堀 進悟 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80129650)
鈴木 昌 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70265916)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 建築環境・設備 / 環境調和型都市基盤整備・建築 / 環境政策 / 健康影響評価 / 予防医学 |
Research Abstract |
本研究では低炭素型居住環境評価システムの開発に向けて、部屋・住宅スケールと都市・地域スケールのそれぞれの観点から研究を進めている。下記に、平成24年度の研究実施概要を記す。 1)部屋・住宅スケール 部屋・住宅スケールにおける健康影響を検討するため、実フィールドとモデル住宅などにおいて実測調査(実住宅の現状調査及び被験者実験)を継続的に実施し、収集したデータに基づいて健康決定要因とその影響度を導出するとともに、転居や住宅改修を行なった世帯の住宅仕様(断熱性能や内装材等)やライフスタイル(冷暖房使用時間等)を調査し、縦断データを得ることで経年変化を考慮した健康影響を検討した。平成24年度においては、特に室内温熱環境と血圧変動に関する検証について多くの住宅を対象として進めている。また、住まい方による消費エネルギーの違いについても検証し、居住空間に対する満足度・関心度が断熱改修に与える影響についてモデル化を行なった。 2)都市・地域スケール 都市・地域スケールにおける健康影響を検討するため、昨年度からの引き続き日本全国の現状と住民の健康状態の関係について包括的に調査するためツールの開発・改訂を行なった。そのツールの検証のためのWEBアンケート(約10,000 サンプル)によって、ツールの評価値の良化に伴い、居住者の健康関連QOLの向上および健康リスクに関わる自覚症状の症状申告率低下の傾向を示した。また、小中学生とその保護者といったライフステージを考慮した調査分析や、先行調査の回答者に追跡調査・統計解析によって時間的先行性を考慮した因果推論に基づく健康影響要因の検証を行なった。更に、活動量計を用いた実測調査によって居住者の生活習慣と住宅・コミュニティの質の関係について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、居住環境の改善をもたらす低炭素化対策による健康維持便益の認識とその対策の普及に向けて、『①居住環境が健康へ及ぼす影響度の解明』、『②居住環境の改善による健康被害低減の経済性評価』、『③健康被害低減効果の認識が低炭素化対策の普及に与える影響の解明』の3つのアプローチから達成を目指している。平成25年度における、各アプローチの達成度は以下の通りである。 ・①居住環境が健康へ及ぼす影響度の解明: 当項目の達成に向けて、実フィールドや実験室実測に基づく調査研究により、居住環境における健康決定要因の推論とその健康影響度の定量化のためのデータを収集した。前年度と今年度の調査研究によって夏季の熱中症リスクや冬季の入浴時の健康リスク、温熱環境の変位による血圧・心拍変動のリスク等について検証し、その影響度を多変量解析などによって定量的に示した。今後も検証を続ける価値はあるものの、当初の計画通りの成果を得ている。 ・②居住環境の改善による健康被害低減の経済性評価: 当項目については検証が進んでいないものの、経済性評価モデルについては昨年度に体系を整えているため、これらの評価モデルに①の成果を挿入することで達成が可能といえる。 ・③健康被害低減効果の認識が低炭素化対策の普及に与える影響の解明: 当項目のために、経済的なインセンティブとしての直接的便益およびその他の間接的便益の提示が、高断熱住宅の普及に与える影響のモデル化について検証を進めた。当モデルにおける間接的便益の領域に①と②で明らかになった成果を組み込んでいくことにより、目標を達成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、現在までに『②居住環境の改善による健康被害低減の経済性評価』と『③健康被害低減効果の認識が低炭素化対策の普及に与える影響の解明』の方向付けが完了していることから、『①居住環境が健康へ及ぼす影響度の解明』のエビデンスをより確固たるものとして対象とするエリアや症例等を拡張することで、評価システムをより発展させることができる。そこで、今後の推進方策としては下記等を検討しており、これらと②と③の推進によって低炭素型居住環境評価システムの確立を果たす。 1)多地域・他期間データの収集: 開発するシステムを日本全国で運用可能とするためにも調査地域や対象期間を拡大し、有用なサンプルデータを逐次収集・確保していく。 2)縦断データの収集: 昨年度においても縦断データの収集・解析を行なったが、サンプルが少数であることや経年期間の短さ等によって正しい結果が導けていないことが示唆された。そこで平成25年度においても、部屋・住宅スケールと都市・地域スケールの両面から追跡調査を継続し、エビデンスの確保を目指す。 3)住環境と居住者の活動量に関する検証: 収集した活動量データに基いて、居住者のロコモティブシンドロームを防ぎ健康維持増進を果たす住環境について探る。
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Research Products
(37 results)