2011 Fiscal Year Annual Research Report
スピン・分極空間創発による複合酸化物の電気・磁気・光機能開拓
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23246113
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 満 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (30151541)
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Keywords | PLD法 / 薄膜 / 蛍光体 / 強誘電性 / 磁性 / 高圧安定相 / ペロブスカイト型 / K2NiF4型構造 |
Research Abstract |
本研究では、創発化学により従来のプロセスでは実現不能なスピン・分極空間を創成し、これまでの酸化物合成プロセスでは決して手に入れることができなかった、実質的に極めて大きな負の圧力条件に相当する場を作り出す真空プロセス(PLD法)により、ペロブスカイト型酸化物を中心とする複合酸化物を合成して系統的に評価することにより酸化物科学の新しいパラダイムを構築することを目的とする。本年度はPLD法でBaTiO_3, SrTiO_3, MgTiO_3, MnSnO_3, ZnSnO_3, CaIrO_3, FeTiO_3等の薄膜を合成した。その結果、BaTiO_3では数%体積膨張した薄膜の強誘電性確認し、本系では鴛が700K程度まで上昇し、これが従来報告されている基板との整合歪みのみならず別の原因で処が上昇すること、鶏以上の常誘電相でも大きな正方晶歪みが残存し、これが塁の上昇と関連あることが推定された。この格子歪みの原因は今のところ不明であり引き続き調査予定である。また、誘電特性、磁気特性を測定することによりMnSnO_3, ZnSnO_3, FeTiO_3薄膜はLiNbO_3型強誘電体薄膜であることが確認され、通常の固相反応法では得られない準安定相の合成が可能であることを確認した。蛍光体の新物質探索の戦略として、層状酸化物の1つであるK2NiF_4型酸化物を選択し、より高性能な赤色蛍光体の合成を試みた。LaCaAlO_4のAlを3価のEuイオンで置換した固溶体を合成したところ、本系はいわゆる濃度消光が起こりにくく、Euを高濃度で置換できることを確認し、新しい物質合成の指針を得た。また、本物質の薄膜化にも成功し、赤色純度も従来物質よりも良好であることを確認した。また、PLD法による薄膜作製の新しい利用法として、還元反応場による、新しい原子価、結晶構造の制御が可能であることを確認し、鉄酸化物の強還元相を実現することに成功した。これは薄膜作製では従来、原子配列のみを利用した1種のテンプレートとしての利用ばかりでなく反応場としての利用も可能であることを確認するものであり、次年度以降も引き続き方針を修正しながら研究を推進する予定である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予備的な実験から、PLD法が非平衡プロセスとしての格子の大きさの制御が可能であるという経験則に加えて、還元反応場としての新たな利用法を見いだすことができた。本研究費で新たに導入した装置を使用して、従来、研究者が漠然とした経験則として抱いていた物質合成のイメージを実証することができた。また、同じく、経験的に認識されていた薄膜プロセスによる高圧相の安定化に関しても、圧力範囲を20GPa程度まで拡張して様々な物質を合成することができ、薄膜プロセスの反応性という観点からも従来の実験の枠組みを拡げることができた。以上の理由により、本研究は予想以上に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
スピン、分極空間を創発することにより、強誘電体、強磁性体、あるいはそれらを兼ね備えた物質を新たに得ることに注力する。本研究では従来の発想の枠組みを超えた新しい概念を提示することを目的としており、これを、無機材料・固体物理に普遍的概念として、そして結果を国内外での学会発表、論文として積極的に報告してゆく予定である。これを達成するため、次年度以降は、さらに本概念の応用の可能性を広げるため、実験装置の改良の行いb¥ながら、さらに多様な実験条件を試みつつ研究の進行を加速させる予定である。
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Research Products
(49 results)
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[Journal Article] Defect Controlled Room Temperature Ferromagnetism in Co-doped Barium Titanate Nanocrystals2012
Author(s)
Sugata Ray, Yury V. Kolen'ko, Kirill A.Kovnir, Oleg I. Lebedev, Stuart Turner, Tanushree Chakraborty, Rolf Erni, Tomoaki Watanabe, Gustaaf Van Tendeloo, Masahiro Yoshimura, and Mitsuru Itoh
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Journal Title
Nanotechnology
Volume: vol.23
Pages: 025702 1-10
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] High-pressure Synthesis and Correlation between Structure, Magnetic and Dielectric Properties in LiNbO_3-Type MnMO_3 (M = Ti, Sn)2011
Author(s)
Akihisa Aimi, Tetsuhiro Katsumata, Daisuke Mori, Desheng Fu, Mitsuru Itoh, Toru Kyomen, Ko-ichi Hiraki, Toshihiro Takahashi, and Yoshiyuki Inaguma
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Journal Title
Inorganic Chemistry
Volume: vol.50
Pages: 6392-6398
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] フェムト秒時間分解反射・透過分光から見たLa_<1.5>Sr_<0.5>CoO_4結晶の励起状態の研究II2012
Author(s)
江口亜美, 沖本洋一, 松原孝, 山田友輝, 深谷亮, 石川忠彦, 恩田健, 腰原伸也, 谷口博基, 伊藤満, 諫山晃, 笹川崇男
Organizer
日本物理学会第67回年次大会
Place of Presentation
関西学院大(西宮)
Year and Date
2012-03-24
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[Presentation] 電界印加に伴うPb(Zr,Ti)O_3膜の結晶構造変化の解析2012
Author(s)
和田亜由美, 江原祥隆, 安井伸太郎, 中島光雅, 和田芽句, 谷口博基, 伊藤満, 岡村総一郎, 西田謙, 山本孝, 小林健, 森岡仁, 舟窪浩
Organizer
2012年春季第59回応用物理学関係連合講演会
Place of Presentation
早稲田大(東京)
Year and Date
2012-03-17
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