2012 Fiscal Year Annual Research Report
スピン・分極空間創発による複合酸化物の電気・磁気・光機能開拓
Project/Area Number |
23246113
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 満 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (30151541)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 機能創発 / 誘電性 / 磁性 / 蛍光特性 / 薄膜 |
Research Abstract |
本年度は、(1)ペロブスカイト薄膜の成長と構造、誘電特性(2)遷移金属ドープBaTiO3薄膜の強磁性の確認(3)遷移金属・希土類ドープ複合酸化物薄膜の発光特性(4)全酸化物EL・LED発光デバイスの構造最適化を計画に従って進行させた。(1)に関しては、BaTiO3薄膜を方位の異なるSrTiO3基板上に成膜し、(100)と(110)上で成長した薄膜の構造を詳細に検討した。(100)基板上では単ドメインのBaTiO3膜が成長し、Tcが800K程度であることを確認し、(110)基板上ではTcが500K程度であり、これらの差が、基板の原子配列の差に起因する応力の次元の差に起因することを確認した。また、準安定相物質であるGaFeO3型のAlFeO3薄膜を世界ではじめて安定化し、本物質の強誘電性をPFM を用いて確認した。なお、得られた薄膜の結果を、固相反応法で得られる、セラミックスの結果と比較し、非平衡真空プロセスであるPLD法で得られた薄膜の構造とそれに関連する物性の特異性を評価した。(2)に関しては、CoをドープしたBaTiO3ナノ粒子を溶液法で作製し、加熱温度変化に伴う磁性と構造の変化を対応させて議論した。その結果、Co-ドープBaTiO3で発現する強磁性は、加熱過程で生成・消滅する酸素空孔と水酸基OH-と密接な関連があり、Co-ドープBaTiO3における強磁性は、Aサイト空孔、酸素空孔、水酸基OH-を媒介とするCoイオン間の相互作用が支配することを確認した。また、この結果を、第1原理計算で妥当性を確認した。(3)に関しては前年に引き続いてK2NiF4型の発光体を探索し、赤と緑の発光体を得ることに成功した。(4)に関してはin situアニール用のPLD基板加熱装置を設計・作製し、基板-ターゲット間距離を25mm程度まで縮めることで、より多彩な材料と電極の堆積を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初想定した新物質探索が、極めて順調に進展しており、特に、非中心対称の準安定相(GaFeO3型、LiNbO3型)を薄膜で安定化することが極めて意義深い。これまで、準安定相の安定化はこれまで、急冷、超高圧法を用いて行われてきたが、本研究では、基板と膜との化学親和性、原子配列、格子サイズを制御することで20GPaに相当する準安定状態を薄膜単結晶で得ることができることを確認した。また、新しいマルチフェロイックも得ることができた。さらに、4配位系強誘電体の設計指針を構築することが出来た。これまで、4配位系の強誘電体の可能性について、ほとんど議論されてこなかったが、本研究では、第1原理計算も併用して、極めて明確な設計指針を構築中であり、次世代につながる、物質研究が拓ける可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも、(1)から(4)まで精力的に研究を進める。現在までのところ、予想通りの結果が得られているので、さらに、予想を覆すような研究を鋭意進行させる予定である。
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