2011 Fiscal Year Annual Research Report
規則構造の格子欠陥制御に基づく環境フレンドリー熱電変換材料の高性能化
Project/Area Number |
23246120
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 好里 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 准教授 (90262295)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHAI Yaw-wang 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特任助教 (80455922)
|
Keywords | 熱電材料設計 / 格子欠陥制御 / 三次系状態図 / 相界面 |
Research Abstract |
再生可能エネルギーとして自然界に存在する熱源、産業活動から排出される未利用の廃熱など、様々な形態と規模の熱が至る所に広く分散して存在している。これら熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換できるクリーンな「熱電変換発電」システムを社会に広く普及させることができれば、温室効果ガスの排出量削減とエネルギー環境問題の解決に貢献できる。本研究では高温用の熱電変換材料としてハーフホイスラー型化合物を選択して、格子欠陥制御により飛躍的な熱電特性の向上させるための低環境負荷元素に基づく材料設計基盤を構築することを目指す。 本研究課題は追加採択されたという事情により、初年度の研究期間は実質4ヶ月に限られた。そこで事前調査の研究として進めていたTi-Ni-Sn三元系状態図の構築に取り組んだ。熱電材料としてのハーフホイスラー化合物の中では、低環境負荷および元素戦略の面からTiNiSnベース合金の実用化が最も望ましい。実際にはTiNiSn合金の作製プロセスは他のハーフホイスラー合金に比べて難しい。TiNiSn合金設計を作製プロセスと共に開発するためにはTi-Ni-Sn三元系状態図を構築することが不可欠である。800℃および1000℃の等温度断面ならびに反応経路図の考察を進めた。TiNiSnの相平衡に影響を及ぼす相として、アーク溶解のas-cast組織にTi_2Ni_2Snが確認された。1373K以上で加熱保持すると体積率が減少して消失することからTi_2Ni_2Snは準安定相であると考え、今後の課題として検討する。 さらに当初の計画を若干変更して、ハーフホイスラー相と平衡して共存するホイスラー相との結晶学的な関係ならびに異相界面の特徴を理解するために、Ti-Ni-SnおよびZr-Ni-Co-Sn系合金の透過電子顕微鏡を用いた組織観察を行った。ハーフホイスラー母相に析出するホイスラー相の形態から、ハーフホイスラー相は比較的大きな弾性異方性を有する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は11月後半に追加採択されたという事情により、初年度は実質4ヶ月の研究期間に限られ、研究分担者1名が学内本務の都合により参加を辞退した。しかし採択の可否に関わらず運営費交付金を土台として進めていた事前調査研究に基づいて速やかに本研究課題を開始できるように努力した。その結果として若干の計画変更を加えながらも、熱電材料設計の基盤となるTi-Ni-Sn三元系状態図の構築、および格子欠陥制御としてのハーフホイスラー・ホイスラー異相界面の観察に基づく考察を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度が実質4ヶ月の研究期間に限られたことを受け、研究計画の見直しを行って今後の方策を検討した。ただし当初の研究目的を目指すことに問題はない。熱電材料設計の基盤となるTi-Ni-Sn三元系状態図の構築に関して、初年度に見いだした課題に取り組みながら完成度を上げ、規則構造の格子欠陥制御に直結させるためCoを加えた4元系への拡張を試みる。透過電子顕微鏡によるハーフホイスラー・ホイスラー異相界面の詳細な観察と解析をM-Ni-Co-Sn系(M=Ti,Zr)に対して行い、格子欠陥としての相界面ならびに空孔サイト固溶元素が熱電特性に及ぼす影響の理解を目指す。空孔サイトの固溶により相安定性はハーフホイスラーからホイスラーに近づくため、両相に関する結晶学的および熱力学的な知見を得ることが有用である。
|
Research Products
(1 results)