2012 Fiscal Year Annual Research Report
規則構造の格子欠陥制御に基づく環境フレンドリー熱電変換材料の高性能化
Project/Area Number |
23246120
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 好里 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90262295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蔡 耀汪 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (80455922)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | 熱電材料設計 / 格子欠陥制御 / 相界面 / 三元系状態図 |
Research Abstract |
地球温暖化の抑止策としてだけでなく、震災後に再考が進む発電の在り方の議論においても、再生可能エネルギーを利用した発電技術の確立が望まれている。太陽熱など自然界の熱源、産業活動や一般生活で排出される廃熱など、地球上に広く分散して存在する様々な規模の熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換できるクリーンな熱電発電システムを社会に広く普及させてエネルギー環境問題の解決に貢献する。本研究では1000K程度の高温で使用できる熱電変換材料としてハーフホイスラー型化合物を選択し、相平衡に基づく格子欠陥制御と作製プロセスを利用した組織制御により性能を飛躍的に向上させる熱電材料設計の基盤を構築することを目的とする。 相平衡の観点からハーフホイスラーMNiSn相(M=Ti,Zr,Hf)はホイスラーMNi2Sn相の共存を避けることが困難である。ホイスラーは熱電特性を損なう原因となる金属相であるため、その析出過程が熱電特性に及ぼす影響を明らかにした。一方向凝固により単相合金を作製できるZrNiSnを選択し、Ni-rich組成においてNiを過飽和に固溶させた単相合金を作製し、室温から1073Kでゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定した。およそ773Kでハーフホイスラー母相中にホイスラー相の析出が開始することに起因してゼーベック係数の絶対値が急激に小さくなることを透過型電子顕微鏡(TEMおよびSTEM)による組織観察で明らかにした。析出初期はナノサイズのクラスタリングのような状態であり、773Kで3h保持すると体積率5%程度、結晶学的な方向性を持った数十nm程度の板状粒子に成長する。電気抵抗率と熱伝導率の温度依存性には顕著な変化が認められず、ゼーベック係数に及ぼす影響が大きいと考えられる。1273Kで熱処理することで析出したホイスラー相の一部が再溶解し、ゼーベック係数の値も再び大きくなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は追加採択されたという事情により初年度は実質4ヶ月の研究期間に限られ、計画変更を加えながら研究推進の努力を行ってきた。熱電材料設計の基盤となるTi-Ni-Sn三元系状態図の構築に初年度から取り組んでいるが、Sn液相の多い組成域では凝固組織からの判別が難しい。相平衡の観点から避けることが難しい不純物相としてのホイスラー相の析出が熱電特性に及ぼす影響を明らかにしたが、これは第2年度計画には含まれていなかった。当初の計画から遅れる一つの要因となったが、組織因子が熱電特性の及ぼす直接の効果を定量的に理解する重要な知見を得ることができたため、研究全体を進める上では有意義であった。化学量論組成に近いZrNiSnやTiNiSnで観察してきたナノクラスターの存在との類似性が認められ、今後の展開にも期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ハーフホイスラー型化合物の中では、低環境負荷、低コスト、性能などの観点からTiNiSnをベースにした熱電材料設計が重要であると考えている。TiNiSn固有の熱電特性を評価して把握するためには、単相合金または単結晶を用いることが必要であるが、その作製方法は難易度が極めて高い浮遊帯域溶融法にほぼ限られるため、Ti-Ni-Sn三元系状態図の構築と合わせて進展させる必要がある。その一方で、固液反応を利用したTiNiSnの作製手法を本研究グループで開発を進めており、可能な限りmmオーダーでの単結晶作製に挑戦する計画である。同じハーフホイスラー同士のTiNiSnとZrNiSnにおける相分離過程を明らかにすることを目標の一つに加え、相分離過程に基づく(Ti,Zr)NiSn合金の組織制御による熱電性能向上の可能性について研究を進める。特に走査型透過電子顕微鏡(STEM)を駆使した組織観察、構造解析、組成分析を効果的に進めるため、一方向凝固によるバルク試料の作製が鍵となる。そのため固液拡散対:(Ti,Zr)Ni[固相]/Sn[液相] を用いた拡散経路と反応経路を事前に調べて相平衡の理解に務める。最終的にハーフホイスラー型化合物をベースとするn型とp型から構成された熱電モジュールの作製に近づきたい。
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Research Products
(2 results)