2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属表面における自己組織化ナノホールアレイの生成過程と医療材料への展開
Project/Area Number |
23246128
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 愼司 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70199371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土谷 博昭 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50432513)
宮部 さやか 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50584132)
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Keywords | 電気化学プロセス / ステンレス鋼 / チタン・チタン合金 / コバルト・クロム合金 / ナノホールアレイ |
Research Abstract |
本年度は、有機溶媒における電気化学プロセスによる生体用金属材料表面へのナノホールアレイの生成とそのナノホール径、ナノホール深さなど形態に及ぼす電気化学条件ならびに材料因子の影響について検討した。電気化学条件の影響としては、粘度、水分ならびに添加剤の影響を調査し、その結果、過塩素酸を加えたエチレングリコール中でのSUS316Lステンレス鋼の電解処理では径が約数十から数百nm、深さが約数十nmのナノホールアレイは形成し、径・深さは電解電圧の増加により増大した。より粘性が大きいグリセリンを用いた場合ではナノホールアレイの生成は確認できたが、径・深さは非常に小さくなった。一方、電解液に含まれる水分の影響では、水分をごく微量しか含まない電解液ではナノホール生成には困難であったが、ある程度以上の水分が含まれることによりナノホール生成速度は著しく増加した。しかし、水分量が多すぎた場合では電解処理が安定して行えなかった。有機溶媒に加える添加剤として過塩素酸以外にも硫酸を加えても、径が非常に小さなナノホールアレイの生成が確認された。また結晶粒面方位など材料組織もナノホールアレイの形態・配向性に影響を及ぼすことが分かった。SUS316Lステンレス鋼と同様の条件でコバルト・クロム合金を電解処理した場合にはナノホールアレイは生成しなかった。ナノホール表面の生体適合性を評価する際には、試料前面にナノホールアレイを生成する必要があるが、従来の電気化学セルでは不十分であったため、新しく電気化学セルを設計・作製した。そのセルを用いて生成したナノホールアレイを、従来のセルで得られるナノホールアレイと比較した。その結果、従来のセルと同様のナノホールアレイの生成が確認され、ナノホールアレイを生成した試料の生体適合性評価の準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は自己組織化ナノホールアレイの生成に及ぼす電気化学条件ならびに材料因子の影響についての調査を目的として研究を実施した。その結果、ナノホール生成の条件や形態制御因子を明確に把握することができ、基板組成、結晶粒面方位など材料因子もナノホールアレイ生成に影響を及ぼすことが明らかとなり、ナノホール表面酸化物の構造解析以外は予定していた項目をほぼ検討することが出来た。さらに次年度以降に予定している生体適合性評価に向けた準備にも着手した。以上のことより、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、様々なサイズのナノホールアレイを有する生体用金属材料の生体適合性を静的環境下ならびに動的環境下にて評価する。具体的には、ナノホールアレイを生成した試料上での細胞増殖挙動、細胞活性の指標であるコラーゲン生成量測定およびALP活性測定、さらにアクチンファイバーの観察による細胞進展度評価ならびにビンキュリン観察によるナノホール上での細胞接着箇所の解明といった静的環境下での評価とともに動的環境下での評価として細胞培養下でのナノホールアレイ表面酸化物層破壊に伴う溶解挙動の調査を行う。
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