2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空隙の吸着サイト改質とミクロ界面すべり制御による木材の超塑性加工法の開発
Project/Area Number |
23246129
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三木 恒久 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 研究員 (20415748)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉元 宏行 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 研究員 (70425742)
金山 公三 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 研究グループ長 (60356798)
|
Keywords | 材料加工・処理 / 高分子材料 / 微細構造 / 界面 |
Research Abstract |
本研究では、"木材の超塑性挙動"に着目し、ナノ~マイクロレベルでの微細構造変化の観点から変形メカニズムを解明するとともに、木材の超塑性現象を利用した変形加工技術の開発を目指す。具体的には、木材の非結晶領域に多く分布するナノ空隙と吸着サイトを把握・制御して、種々の界面状態を変化させ、木材に超塑性的変形を生じさせる。また、吸着サイトや吸着剤のナノ表面処理によって、変形と同時に寸法安定性や強度、難燃性能を付与することを目的とする。当該年度は以下の3つの項目を検討した。 1.ナノ空隙の把握と制御:超塑性現象発現に必要な材料内部における「すべり面」生成の起点となるナノ空隙の量や大きさが、主に温度や含有水分等の「履歴」によって変化することを見出した。160℃までの熱処理を行い、ガス吸着測定(物理吸着)により一定温度における空隙量を把握した。その結果、解析によって計算された空隙サイズでは、熱処理温度が高くなるにつれてサブナノメートルの空隙量が減少することが分かった。また、水銀圧入法による空隙測定においても、数ナノメートルの空隙の存在が確認され、木材調整条件と空隙構造の変化に関してガス吸着測定と水銀圧入法を併用して定量的データを得る準備が整った。 2.吸着サイトの把握と制御:分子量を400程度に調整した低分子フェノール樹脂(水溶性)を木材に導入し、木材中に存在する空隙量の増加を試みた。熱流測定(DSC)の結果から、無処理木材に比較して、ガラス転移における比熱容量の変化が大きく現れること、FT-IRにおいてリグニンやヘミセルロースの波数域の変化が顕著に現れることなどから、非結晶領域の吸着サイトの改質が確認された。更に分子量の大きなポリエチレングリコール(分子量20000)までの導入を試み、より大きな空隙の導入を図るための実験方法が確立された。 3.界面すべりの制御:数種の添加剤(グリコール類、フェノール樹脂)を導入した木材の熱軟化特性を動的粘弾性測定により評価した。また、細胞間すべり特性を評価する円柱試験の方法をほぼ確立した。SPMによって細胞実質と細胞間層の物性値に変化があることが確認された。これらの軟化挙動、すべり現象(降伏挙動)、組織構造における物性値の差を総合的に検討することによって、木材で生じる超塑性的変形挙動の発生についての検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、本研究の核となる木材の超塑性的変形挙動について多くの企業が関心を抱き、技術相談やサンプル提供などを求める案件が増加してきた。また、実際に共同研究が開始したため、実用化を目指した製品開発を重視した結果、超塑性的変形挙動の発現・メカニズムを解明する学術的な研究が計画通り(特に、X線回折測定、NMR測定、SPMによる面内の物性値の差を検出する実験)には進んでいない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度においては、微細空隙測定と熱的測定において適していると思われる条件・手法を見出すことができた。これらの結果と微細構造とその変化ならびにすべり現象の関連を示すような知見の収集がまだまだ必要であり、現在の検討を引き続き行う。一方で、工業的に応用できる技術の開発を目指し、材料調整に関する特許の出願を検討する。
|
Research Products
(3 results)