2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23246168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝村 庸介 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70111466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 久明 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00334318)
室屋 裕佐 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (40334320)
山下 真一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20511489)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水化学 / 水の放射線分解 / パルスラジオリシス / モンテカルロ計算 / 水和電子 / OHラジカル / スパー反応 / 超臨界水 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子炉冷却水の化学環境は放射線分解により大きく支配されることが知られている。その放射線分解を直接の測定することは困難であることから、放射線分解の評価に計算機シミュレーョンが適用されてきた。これまでに6つ程度のグループでの報告がある(国内2グループ、海外グループ4グループ)。しかし、これらはグループ独自の計算であり、相互の信頼性や差異について比較検討されてこなかった。実際のプラントに適用する場合は、この点を評価することは不可欠であるが、十分な検討は実施されていない。この点に着目し、これらのグループの使用しているG値と反応速度定数セットの相互比較を実施した。具体的には、入力データが計算結果にどのような影響を及ぼすかについて種々の条件下での計算を行い、報告値相互で比較検討し、その検討の過程から、どの部分がほぼ同じ結果を示し、どの部分が不一致をもたらすのかを明らかにし、今後の課題を摘出することを目的とした。 その結果、ガンマ線照射による水分解G値はどのグループのものを使用してほぼ一致した結果を示すのに対し、高速中性子による水分解G値では、最近の評価と旧来の評価で大きな差異がもたらされた。このことから精度の高い高速中性子による水分解G値の決定が必要であることが判明した。一方、反応速度定数セットではいずれのグループの反応セットを用いるかで大きな差異が見られた。詳細な比較から、H + H2O → H2 + OH の反応に対し、どの反応速度を選択するかにより、この差異が発生することを突き止めた。 以上より、原子炉内冷却水の放射線分解シミュレーションの精度向上には、上の二点の精度の高い数値を決定することが最大の課題であることを示した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費の申請時に掲げた3つの課題は、(1) 放射線反応のダイナミックな反応過程の観測、(2) 水素臨界濃度の機構解明、(3) 10B(n,α)7Liによる高温水分解評価、であった。 (1) については順調に進展し、震災で損傷を受けたピコ秒パルスラジオリシスシステムの改修、新システムの構築を進め、平成26年度内に完成した。これにより、高温水のピコ秒パルスラジオリシスのみならず、各種アルコールや溶融塩についても研究を展開し始めている。この実験の結果として、米国のアルゴンヌ国立研究所が報告し、従来の水分解のG値のコンセンサスであった、ピコ秒での水和電子、OHラジカルのG値は各々、4.6, 5.9から4.1, 4.8へと大幅な修正が必要であることが判明した。 (2) については完了、論文として刊行した。 (3) は、震災後、研究用原子炉の再稼動が実現せず、実験での評価は不可能との判断で、理論的なアプローチとして、カナダのシャープルック大学のProf. Jean-Paul Jay-Gerinとの国際共同研究としてモンテカルロ計算での評価を進めてきた。評価値は従来の数少ない報告をよく再現することから信頼性高いと判断している。したがって、本課題としてはおおむね終了で、論文として刊行の段階に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、高温でのH + H2O → H2 + OHなる反応の反応速度定数の信頼性の高い数値の決定が、原子炉冷却水の放射線分解シミュレーションには不可欠であることが判明した。この科研費の範囲内では終了するのは困難な見込みであるが、現行の計算機シミュレーションでは現在、最も重要な反応であり、実験的に決定することが必要と判断し、どのような実験で評価すべきか検討を進め、一つの候補としてBr-水溶液を選択し、予備実験を進めている。それ以外に、炭酸イオン(CO3-)系、 Ce3+水溶液も実験的な検討を加えたが、上記反応の評価には不適当であると判断した。 もう一つはe-aq + e-aq + 2H2O → H2 + 2OH- の反応速度定数の温度依存性に関わるものである。アルカリ性の水溶液中での測定を基礎にして、150℃までは速度定数は増大するが、それ以後は急激に減少するというのが現在の定説となっている。しかし、様々なデータ、状況証拠から中性水溶液での挙動は全く異なり、高温でも増大するのではないかとの提案が海外の共同研究者から示されました。この反応も重要な反応で、従来の評価が誤りであれば、影響は非常に大きいものとなります。このような状況で、これについても実験系を選択し、予備実験をスタートさせています。 以上の二点の課題は、本プロジェクトの遂行の過程で新しく見つかった新しい課題である。これらの課題の解決が、これまでの計算機シミュレーションの精度向上に大きく寄与すると思われ、次の目標課題として進めたい。
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Research Products
(4 results)