2011 Fiscal Year Annual Research Report
組織機能論的なカルパイン作用機序の解析とその普遍性抽出
Project/Area Number |
23247021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
反町 洋之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 分野長 (10211327)
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Keywords | プロテオリシス / カルパイン / 組織特異的発現 / 筋ジストロフィー / 胃腸疾患 / 自己消化 / 遺伝子改変マウス / 基質特異性 |
Research Abstract |
カルパイン(CAPN)は、限定分解により基質機能を調節する「モジュレーター・プロテアーゼ」である。ヒトは15のカルパイン遺伝子を有し、その中ではμ-及びm-カルパイン(活性サブユニットがCAPN1及びCAPN2と呼ばれる)が古くから研究されている。しかし、その発現の普遍性のためノックアウト(KO)マウスが胚性致死となり、機能解明が難航している。 申請者らは骨格筋特異的CAPN3、腸管特異的CAPN8及びCAPN9などの組織特異的カルパインを発見し、発現組織の機能と関連づけてこれらの生理機能を解析してきた。その結果、CAPN3はそのプロテアーゼ活性の不全で筋ジストロフィーを引き起こし、CAPN8またはCAPN9の遺伝子欠損はストレス性胃出血の原因となること、を明らかにした。しかしながら、各カルパインのin vivoでの作用機序及び活性制御機構には未だに不明な点ばかりである。 そこで、本研究では、その機能が発現組織の特異的な機能と密接な関係が予想される、組織特異的カルパインの利点を生かし、特定の組織機能がこれらのカルパインにより調節を受ける分子機構を重点的に解析している。特に、遺伝子改変マウスとプロテオミクスを基軸とした遺伝学・生化学的解析によりカルパイン分子の活性制御機構と標的分子群の解明を目指している。その過程で、疾患やマウスの病態(表現型)を参照し、カルパイン不全疾患の発症機序へアプローチし、治療や診断の方向性を示しうるように解析を進めている。 第1年目の今年度は、当研究計画の重要な基盤となるヒトm-カルパインの大腸菌での発現・精製系を確立した。一方、CAPN3については、ノックインマウスとKOマウスの表現型比較より、筋小胞体における非プロテアーゼ機能を明らかとした。今後は、これらの知見を踏まえ、さらに発展させてカルパインの生理機能の同定を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は上記の通り、CAPN3の非プロテアーゼ機能という極めて特異的な現象を見出すことができ、論文を発表すると共に、KOマウスとノックインの両方を用いた本格的な解析を開始することができた。予定していた実験はもとより、新たに得られた知見を元に大幅に研究を展開することができた。このように自由に研究を展開することができたのも、繰越や計画の発展的変更を認めて頂いている科学研究費補助金の制度に寄るものと、心から感謝している次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、研究計画は当初の計画以上に発展して進んでいるため、今後も新しいことにチャレンジしていく精神を強くもち、より良い研究に発展させていきたい。特に、プロテオミクス関係で、強力な解析装置(MASCOT蛋白質同定システム)を導入することができたので、今後さらに差分プロテオーム解析をスピードアップして、新規知見の発見に力を尽くしたい。
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