2012 Fiscal Year Annual Research Report
階層を登る1分子生理学-分子内、1分子そして細胞へ-
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23247022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 秀男 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90165093)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | モータータンパク質 / 細胞 / ナノメートル / ダイニン |
Research Abstract |
ダイニンは細胞輸送・細胞分裂・鞭毛運動に本質的な役割をもつモータータンパク質である。ダイニン分子は非常に巨大なために(約500kDa)その組換え体発現はそれまで困難であったが2004年に細胞性粘菌及び酵母由来の細胞質ダイニン1の組換え体の発現・精製に成功して以降、ダイニン分子の研究は急速に進展している。たとえば、ダイニンの組換え体により大量発現やアミノ酸変位導入が容易になり、これまで不可能だった実験が可能になった。他のダイニンについても同様なことが言え、組換え体の発現系確立は研究を進展させる上で必須であるが,細胞質ダイニン1以外のダイニンの組換え体の発現系は確立されていない。現在のところ特定の軸糸ダイニン及び細胞質ダイニン2の臓器からの単離法さえ確立しておらず、これらのダイニン分子がどのような運動機能を持つのかといった基本的なことさえ全くわかっていない。そこで、世界に先駆けて細胞質ダイニン2及び軸糸ダイニン組換え体精製系を確立し、ヒトダイニンスーパーファミリーの網羅的機能解析を行なった。3種類のヒト由来のダイニンについての分子特性の解明に着手し、発現することが確かめられた。 細胞に関しては、PAR1-GFP発現株のPAR1の輸送経路を計測するための位相差と蛍光画像を同時に見ることができる装置装置を完成し、現在小胞輸送の観察を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精製タンパク質に関しては、実験データーをまとめて論文を書き始めていることから、おおむね順調に研究が進んでいることがわかる。論文の内容を具体的には、人ダイニンの精製をバキュロウイルスを用いて成功し、一回の精製で200マイクログラム程度の終了であるため、一分子の実験を一か月以上の期間行うことができるようになった。この精製されたダイニンを用いて、1分子により運動解析、力測定および、微小管との相互作用の様式がわかってきた。特に注目すべきは、1分子の力は5pN以上あるのに対して、ダイニンを少し短くした分子では1pN程度であったことであった。 また、細胞に関しては、ミオシン、ダイニン、キネシンによって輸送される小胞に着目して、輸送過程を測定するための位相差と蛍光を同時に見ることができる装置を用いて、細胞内郵送のデーターを多数とることができた。特に、細胞内では、細胞膜から核に向かう際の運動が非常に複雑な経路であることが判明した。これらのことから研究が順調に進んでいることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内小胞の変位が得られるようになったならば、3次元的な運動を観察できるように、顕微鏡に2焦点ユニットを結合して、同時に異なる焦点で量子ドットの画像を取得して、3次元的な運動を解析する。現有のGFP―PAR1発現細胞を利用してその運動が、細胞膜からエンドサイトーシスする頻度の測定を行う。 キネシンとダイニン分子に焦点をあてて、モデル構築を行う。以前の仮説1によると「モーター分子のステップサイズの平均値は,パワーストローク距離と非対称な解離定数によって決まる」はずであり、この仮説が、wild type と柔らかいモーター分子当てはまるかを解析する.次の仮説2 では、「ステップサイズの分布は解離した頭部のゆらぎ幅でほぼ決まる」のであるので、ステップサイズ分布と頭部のゆらぎ(弾性率)を比較する。仮説3 では、「最大力は結合した頭部の弾性率で決まる」わけであるから、結合頭部の弾性率をモデルから予想する。これらのモデルは、キネシンやダイニンだけでなく、他のモーターミオシンなどに応用ができるかも検討をする。
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Research Products
(7 results)