2013 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質複合体形成過程の分子シミュレーションによる遭遇複合体の役割の解明
Project/Area Number |
23247027
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
木寺 詔紀 横浜市立大学, その他の研究科, 教授 (00186280)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生物物理 / タンパク質間相互作用 / 遭遇複合体 / 分子動力学シミュレーション / 自由エネルギー / 構造・機能予測 |
Research Abstract |
タンパク質-タンパク質複合体の形成過程を水中での全原子モデルに基づいた精密なシミュレーションで研究することを目的として、方法論の確立を昨年度までに完了して、25年度は対象とする系のシミュレーションを行った。Multi-scale enhanced sampling (MSES) 法を用いて、モデル系としてRNA分解酵素であるBarnaseとその阻害タンパク質であるBarstarの複合体系について、タンパク質間相互作用の遭遇から結合までの状態のシミュレーションを行った。また、N-terminal domain of Phosphotransferase system, enzyme I (EIN)とPhosphocarrier protein HPr複合体のシミュレーションも行った。しかしながら、その計算の過程10月頃に計算方法に技術的な誤りがあることが判明し、再計算を余儀なくされた。問題は本質的ではあるものの、結果に影響を及ぼすものではなく、上記の計算結果によって得られた結論を改訂する必要はないものと考えている。その結論とは、「funnel-likeな特異的構造への誘導の機構を持つBarnase-Barstar複合体と、極めて広い遭遇領域を含めた認識部位を運動するEIN-HPr複合体は、まったく異なる両極端の結合様式を持つタンパク質-タンパク質複合体である」というものである。25年度中には再計算が完了しなかったものの、26年度の第一四半期のうちには完了するものと期待している。早期にそれらの結果を論文としてまとめ、昨年度の遅れを取り戻し、次の対象であるDNAとHOXD9との複合体における特異的認識部位の探索に取りかかりたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したように、計算方法に技術的な誤りがあることが判明し、再計算を余儀なくされたことによって、半年ほどの計画の遅れが生じた。しかしながら、現状ではその改良を含めて、すべて問題は解決し、すでにBarnase-Barstar複合体系は、再計算をほぼ完了し、EIN-HPr複合体系は、順調に再計算が進んでいる。再計算の進展が早いのは、すでに昨年度に一度完了している計算をほぼ同様なプロトコルで行うことが可能なためである。原理的には、その方法の有効性は明らかであり、今年度中にDNAとHOXD9との複合体における特異的認識部位の探索について、めどをつけることができるよう、さらに研究を加速させていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、26年度当初は、再計算に時間を費やす必要がある。しかしながら、問題は本質的ではなく、順調に再計算を完了することができるものと考えている。より本質的には、DNA-HOXD9複合体についてのシミュレーションを行うときに、より広範な領域を限定された計算時間中にサンプリングしようという問題に直面し、そのためには広く薄く領域をサンプリングするという新たな方法の樹立が必要となる。最終目標であるDNA-HOXD9複合体は、あと1年間では最終的な結論を出すところまでは行かないおそれがあるが、可能な限り努力したい。上記とは別に、「polyubiquitinのlinkageの違いによる構造分布への影響」、「Heterochromatin protein 1の天然変成部位のリン酸化に伴うhistone tailの認識の変化」という二つの問題についてもMulti-scale enhanced sampling計算を行う展開を予定している。また、多剤排出ABC輸送体のinward open状態からoutward open状態への経路探索をstring法を用いて行うことも予定している。以上のように、このプロジェクトで方法論を確立した二つの方法は、多方面への展開を可能としている。
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Research Products
(8 results)