2013 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア・オセアニアにおける現生人類の拡散移住史
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23247040
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
松村 博文 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (70209617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 謙一 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究グループ長 (30131923)
斎藤 成也 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究部門, 教授 (30192587)
徳永 勝士 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40163977)
印東 道子 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 教授 (40203418)
山形 眞理子 金沢大学, 国際文化資源研究センター, 特任教授 (90409582)
埴原 恒彦 北里大学, 医学部, 教授 (00180919)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人類学 / ゲノム / 考古学 / 解剖学 / 進化 |
Research Abstract |
形質人類学では、タイの7遺跡の先史人骨、中国河南省の八里崗遺跡など各地の先史遺跡の数百体規模の形態データの収集を終え、東アジアから東南アジアにおよぶ広範囲の先史人骨の形態データの解析により、この地域における人類集団の二重構造が一層鮮明となりつつある。データの空白域であったインドネシアの新石器人骨の予備調査も実施した。遺伝関係では、Y染色体ハプロタイプに関する詳細な解析も加えて、東南アジア人類集団の歴史についての総合的な推定を行っている。同時にPan-Asian SNP ConsortiumによるゲノムワイドSNPに参加し、構築されたSNPデータベースを用いて統計解析をおこない、アジア・太平洋各地域におけるヒト集団の拡散移動の推定を目指しており、特にマレーシアのネグリトの起源解明は大きな前進がみられた。古代ゲノムも、石垣島の白保竿根田原出土の旧石器人骨のmtDNA抽出と縄文人の次世代ゲノムワイド解析の成功に至った。考古関連では、中央から東部オセアニアへの人類の移動において、言語研究から言われてきた移動とは異なることを明らかにした。東南アジア関係では、前年度までの調査にもとづき、人間集団の移動の陸伝いルートと海を超えたルートの可能性について解析を進めており、その解明の鍵となるベトナムのホアディエム遺跡の発掘報告書の出版も終え、もう一つの重要遺跡であるマンバック遺跡の文化遺物の分析も進めており、二重構造が示されている人骨に副葬された土器がどのような特徴を示すのか、詳細な報告を準備中である。カンボジアで開催されたインド太平洋先史学国際会議では、本代表者と4名の分担者が参加し研究成果を世界で発信するセッションを設け、Bellwood, Higham, Glaverら世界を代表する研究者を交えた成果発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古人骨関連では大規模な形態データの収集を終え、東アジアから東南アジアにおよぶ広範囲の先史人骨の形態データの解析も順調に進行し、この地域における人類集団の二重構造が一層鮮明となりつつある。遺伝関係でも、Pan-Asian SNP ConsortiumによるゲノムワイドSNPに参加し、本年度時点までに構築されたSNPデータベースを用いて統計解析をおこない、アジア・太平洋各地域におけるヒト集団の拡散移動の推定を目指しており、ネグリトやアイヌのデータ解析、古代DNAでは石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡出土の旧石器人骨のmtDNA解析と縄文人の次世代シークエンサーによるゲノムワイド解析の成功は注目に値する。考古関連については、考古資料の収集をつづけつつ、データベース化に区切りをつけ、中央から東部オセアニアへの人類の拡散を明らかしている。東南アジア関係では、前年度までの調査にもとづき、人間集団の移動の陸伝いルートと海を超えたルートの可能性について解析が順調におこなわれている。成果公表については論文や著書の刊行も着実におこなわれており、カンボジアで開催されたインド太平洋先史学会議では、研究成果の国際的発信を成功裏におさめた。
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Strategy for Future Research Activity |
形態学関連では、新資料として昨年発掘されたベトナムのCon Co Ngua遺跡出土の古人骨の調査と、本年度はデータの空白域であったインドネシアの資料としてGua Harimau遺跡の新石器人骨などの収集をおこなう。これらの新資料を加えつつデータベース構築に一つの区切りをおこない、東南アジア・オセアニア集団の拡散ルートと分化年代に関する解析に取り組む。遺伝関係では、前年度までにおこなってきた解析を総合し、さらにY染色体ハプロタイプに関する詳細な解析も加えて、東南アジア人類集団の歴史についての総合的な推定を行う。また引き続きPan-Asian SNP ConsortiumによるゲノムワイドSNPに参加し、他にも倫理手続きの認証が見込まれるサハリンアイヌやカンボジア人資料などの新資料からのゲノムデータを加えるとともに、本年度時点までに構築されたSNPデータベースを用いて統計解析をおこない、アジア・太平洋各地域におけるヒト集団の拡散移動の推定を目指す。古代人のゲノムもベトナムのCon Co Ngua遺跡をはじめ、東南アジア地の発掘人骨の試料のミトコンドリアNA分析を進めるとともに、日本から出土した古人骨のミトコンドリアDNAデータも参照することによって、狩猟採集社会から農耕社会に移行する際の集団の遺伝的構成の変化と、東南アジアでの変化を比較検討し、拡散集団の移住の規模とルートを解明する。また次世代シークエンサーを用いた古人骨核DNAの解読もさらに縄文人を含めサンプルを増やす。考古関連については、考古資料の収集をつづけつつ、データベース化に区切りをつけ、中央から東部オセアニアへの人類の拡散を明らかにする。東南アジア関係では、Man Bac遺跡の文化遺物の分析と報告書作成に向けた作業をすすめつつ、前年度までの調査にもとづき、人間集団の移動の陸伝いと海上ルートの可能性について検討する。
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