2012 Fiscal Year Annual Research Report
環境シグナルに応答する生体センサーの生理人類学的メタボローム解析
Project/Area Number |
23247045
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐伯 茂 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60211926)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 禎一 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60183539)
羽生 大記 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (40301428)
曽根 良昭 美作大学, 生活科学部, 教授 (60145802)
由田 克士 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60299245)
|
Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
|
Keywords | サーカディアンリズム |
Research Abstract |
ヒトの多くの生理現象は概日リズムを有し、体内時計で制御されている。体内時計は環境シグナルに応答して作動する。光が光感受性網膜神経節細胞に取り込まれると視床下部に情報が伝達され、視交叉上核の中枢時計を介 して末梢組織の末梢時計が制御される。視床下部を破壊した実験動物や時計遺伝子欠損マウスでは概日リズムが 変調し、過食・肥満が発症する。ヒトでも体内時計が変調すると、睡眠障害、摂食障害、自律神経障害、メタボ リック症候群が発症する。このことは、体内時計は環境シグナルに応答して栄養素の代謝を制御することを示唆 する。一方、概日リズムが撹乱した実験動物では、一定時刻に食事を摂取させると概日リズムは回復する。この ことは、食事も体内時計を制御する重要な環境シグナルであることを強く示唆する。本研究では、環境シグナル に応答して作動する生体センサーの制御機構を探索することを目的とした。メタボリック症候群発症ラットと正常ラットを自由摂取飲水、12時間明暗サイクルで飼育した後、ZT0、ZT4、ZT8、ZT12、ZT16、ZT20、ZT24(ZT:Zeitgeber Time、12時間明暗サイクルにおいて明期の始まりをZT0およびZT24とする時刻)に麻酔下で各々6匹ずつ屠殺し、各種臓器を得た。メタボリック症候群発症ラットの視交叉上核の時計遺伝子ClockとCry1や、肝臓の時計遺伝子Cry1、Per2、Dec2、E4bp4の発現リズムに異常があることを発見した。メタボリック症候群発症ラットの肝臓におけるコレステロール合成系遺伝子の発現ピークが低く、コレステロール分解系遺伝子の発現リズムが消失していることを発見した。メタボリック症候群発症ラットの脂肪組織における時計遺伝子Bmal1、Clock、Per2や、脂質代謝や糖質代謝の重要な転写因子であるPPARγの発現リズムに異常があることを発見した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタボリックシンドローム発症時における時計遺伝子の概日リズムの乱れは、中枢時計が存在する視交叉上核だけでなく、末梢時計が存在する肝臓や脂肪組織でも確認された。肝臓は脂質・糖質代謝の中心臓器であり、また脂肪組織は種々の生理活性物質を産生・分泌し、脂質代謝・糖質代謝を制御する。これらのことから、メタボリック症候群発症ラットで見られたメタボリックシンドロームの発症は、時計遺伝子の日内リズムの乱れによって引き起こされた可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
正常およびメタボリックシンドローム発症を発症する実験動物を室温、低温で飼育して臓器を摘出し、環境温度に応答して変動する生体成分をin vivoで解析する。メタボリックシンドローム発症を発症する実験動物から分離した肝臓の初代培養細胞を用いて、培地の環境に応答して変動する生体成分をin vitroで解析する。
|