2011 Fiscal Year Annual Research Report
ガ類のメス及びオス性フェロモン交信システム進化のダイナミクスを探る
Project/Area Number |
23248008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 幸男 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60125987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 隆嗣 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70301223)
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Keywords | メス性フェロモン / オス性フェロモン / アワノメイガ / 進化 / フェロモンリセプター / 不飽和化酵素 / レトロポゾン / ヘアーペンシル |
Research Abstract |
1.ヨーロッパアワノメイガOstrinia nubilalis(ヨーロッパ)のオス成虫は、その尾端にあるヘアーペンシルと呼ばれる毛状器官からオス性フェロモンを放出していると報告されている。まず、日本産の同属種であるアワノメイガO.furnacalis(アワ)、アズキノメイガO.scapulalis(アズキ)を対象に、同様な器官が認められるかどうか、また同様の化学物質をその器官が貯蔵しているかを調べた。調べた2種には、ヨーロッパと相同な器官の存在が認められた。また、ヨーロッパのオス性フェロモンと同じ4成分をこれらの器官から検出することができた。アズキのフェロモン様物質の組成はヨーロソバにきわめてよく似ていたが、アワのそれは明瞭に異なっていた。 2.アワノメイガ類の中で、アワだけがE12-&Z12-14:OAcを性フェロモン成分と利用しており、同属種の中でも特異な存在である。アワのフェロモンリセプターをクローニングして調べたところ、OR1~OR8のうち、OR4だけが他種のOR4と異なる部分配列を有していた。アワのOR4バリアントについて発現解析を行い、その応答特異性を調査したところ、OR4のバリアントはE12-&Z12-14:OAcに特異的に応答することが発見された。そこで、E11-&Z11-14:OAcに特異性高く応答するOR4の標準タイプとOR4バリアントとのキメラ遺伝子を多種類作成して機能解析したところ、基質の2重結合の位置特異性に関わる遺伝子の部位を推定することができた。 3.性フェロモン合成酵素の一つΔ11不飽和化酵素を、アワノメイガ類の中でも祖先的形質をもつウスジロキノメイガO.latipennisからクローニングして調べたところ、同属他種ではレトロポゾンの挿入により不活化されてしまったとされていた遺伝子に相同であることがわかった。これは、フェロモン生合成系の進化の理解に大きなインパクトを与える発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アワノメイガ類のメス及びオス性フェロモンの化学分析は順調に進んでいる。オス性フェロモンの生物検定を行ったところ、アズキノメイガについては同属他種で成功している方法でフェロモンの効果を検出できなかった。今後は別の検定法を試みるとともに、アズキノメイガ以外のアワノメイガ類についても検討を加える。
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Strategy for Future Research Activity |
同一の遺伝子セットを持ちながら、雌雄間で異なる性フェロモン(様)物質が生産されてくるメカニズムの解明に来年度は取り組みたい。このため、アワノメイガ類の細胞に共生して、寄主の生殖を操作する細菌ボルバキアの[メス化能」を巧妙に利用する予定である。また、オス性フェロモン様物質を日本産アワノメイガ類のすべての種から抽出・同定し、オス性フェロモンがメスの配偶行動に及ぼす影響を詳細に検討する予定である。
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Research Products
(4 results)