2013 Fiscal Year Annual Research Report
ガ類のメス及びオス性フェロモン交信システム進化のダイナミクスを探る
Project/Area Number |
23248008
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 幸男 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60125987)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 隆嗣 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70301223)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | アワノメイガ類 / フェロモン交信系 / 不飽和化酵素 / 進化 / ヘアーペンシル / 嗅覚受容体 / フェロモンリセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
ガの性フェロモンはその分子構造から、末端に官能基をもつType-Iと、末端に官能基をもたないType-IIに大別されている。ヒトリガ科のアメリカシロヒトリ(Hyphantria cunea)はType-Ⅰ成分のZ9,Z12-18:AldとZ9,Z12,Z15-18:Ald(不飽和アルデヒド)及びType-Ⅱ成分のZ3,Z6,epo9-21:Hと1,Z3,Z6,epo9-21:H(エポキシアルケン)の両タイプの性フェロモン成分を同時に分泌している珍しい種である。本種のフェロモン腺で特異的に発現する酵素の遺伝子Hc_epo1を単離し、その機能解析により、この酵素はフェロモン前駆体である不飽和炭化水素の9位に特異的にエポキシ環を導入することを示した。分子系統解析により、Hc_epo1はP450のCYP341サブファミリーに属することが判明したため、CYP341B14と命名した。ガの性フェロモン生合成に関わるエポキシ化酵素は初めての発見であり、他種のガにおけるCYP341B14ホモログに関する知見は全くなかったため、つづいて近縁種のクワゴマダラヒトリ(Lemyra imparilis)のフェロモン腺からホモログを単離し確認をおこなった。CYP341の配列情報に基づいて、縮重プライマーを設計し、増幅産物を得たのち、RACE法により全長塩基配列(1530bp)を獲得した。この遺伝子をLi_epo1と名付け、演繹アミノ酸配列を解析したところ、Hc_epo1との相同性は88.4%であり、活性を持つために必要な、膜貫通領域、遠位のスレオニン残基とその周辺配列、K領域、芳香族領域、ヘム結合領域と近位のシス残基などのモチーフをN末端側より順に確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アワノメイガ類のオス性フェロモンについては、オスのヘアーペンシルからオス性フェロモン様物質の抽出と同定に成功している。しかし、メス成虫に対する生理活性の確認がとれない。当初想定していた以外の生理活性がある可能性(たとえば、同種のオスに対する忌避効果)がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
オス性フェロモンについては、オスに対する効果などの総合的な検討を続ける。また、メス触角上で発現している性フェロモンリセプターについて精査するほか、触角電図法を用いて、メス触角のオス性フェロモン様物質に対する反応を調査する。これと並行して、当初からもう一つの研究の柱であった、性フェロモン成分の切り替えメカニズムについて、不飽和化酵素を中心に研究を進めている。こちらの研究は順調に進捗しているので、労力および資金をこちらの研究に重点的に配分し、研究のさらなる進展を図る。
|
Research Products
(2 results)