2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23248022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 健二 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30208954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 範久 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00282567)
三木 直子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30379721)
内海 泰弘 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50346839)
楠本 大 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (80540608)
坂上 大翼 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90313080)
種子田 春彦 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90403112)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | キャビテーション / エンボリズム / リフィル / MRI |
Research Abstract |
広葉樹の水ストレスに伴うキャビテーションの起きやすさ(脆弱性)と、道管への水の再充填(リフィル)能力について検討した結果、木部のキャビテーション抵抗性は材密度と相関があることを明らかにするとともに、キャビテーション抵抗性が低い樹種ほど再充填能力が高く、通水阻害のリスクを再充填により補償しているという、まったく新しい仮説を提示した(Ogasa et al. 2013)。 広葉樹の水ストレスに伴うエンボリズムの発生過程を、カツラとシラカンバについて明らかにした。いずれの樹種でも、葉の水ポテンシャルの低下過程でのMRIでみたエンボリズムの断面積の増加は、既往の生理学的手法(自然乾燥法および遠心法)により作成された脆弱性曲線とよく一致した。また、年輪別にみると、当年生木部ではエンボリズムの発生が緩やかであることが示された(河口ら 樹木医学会大会発表)。 広葉樹のエンボリズムからのリフィルによる回復メカニズムを明らかにするため、一本の道管にキャピラリーを挿して溶液や気体を出し入れする実験系を確立した。これを用いて、ショ糖溶液を道管に流したり、人工的に壁孔内に気泡の入った状態を再現することに成功した。この実験系により、隣接する道管と再充填中の道管を隔離している道管の壁孔内の気泡が、0.1 MPa 程度の陽圧まで耐えられることが実験的に示された(Ooeda ら Plant, Cell & Environment, submitted)。 マツ材線虫病およびナラ枯れ、エゾマツ青変病について、病原体の分布とエンボリズムとの空間的、時間的な位置関係を明らかにした(Akami et al. IUFRO 研究集会発表、高橋ら 日本森林学会発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
広葉樹の水ストレスに伴うエンボリズムの発生特性およびリフィル能力について、従来の水分生理学的手法による成果が着実に得られている。 一方、MRIによる可視化は、散孔材樹種については順調に成果が得られているが、環孔材樹種については位相法による樹液流速の可視化にいまだ成功しておらず、さらなる技術開発が必要である。 リフィルのMRIによる観察は成功していないが、キャピラリーを用いた新たな実験系の確立に成功したことは、リフィルのメカニズムに迫る大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
位相法および造影剤を用いた樹液流速可視化の試みを継続するとともに、切り枝作成時のアーティファクトや凍結によるアーティファクトなど、最近指摘されている従来の生理学的、解剖学的手法の限界をMRIにより評価することで、エンボリズムの発生、回復過程を正しく評価する手法を確立する。 また、新たに確立したキャピラリーを用いた実験系により、リフィルのメカニズムを明らかにすることで、樹種間のエンボリズムへの脆弱性と回復性のトレードオフのメカニズムについての新たな仮説を提示する。
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Research Products
(26 results)