2011 Fiscal Year Annual Research Report
TDLS分析計を駆使した森林生態系におけるメタン動態の新しい理解
Project/Area Number |
23248023
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小杉 緑子 京都大学, 農学研究科, 助教 (90293919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原薗 芳信 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 客員研究員 (90137240)
高橋 けんし 京都大学, 生存圏研究科, 准教授 (10303596)
植山 雅仁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (60508373)
鎌倉 真依 奈良女子大学, 共生科学研究センター, 研究支援推進員 (40523840)
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Keywords | メタン / TDLS / 渦集積法 / 渦相関法 / チャンバー法 |
Research Abstract |
本研究では、研究目的の達成のために、下記の5つの課題を設定している。 課題1濃度計にTDLS分析計を用いた渦相関(EC)法および簡易渦集積(REA)法により、森林生態系(樹冠)スケールでのCH4フラックズの日・季節・年々変動を連続モニタリングし、対象森林がメタンのシンクなのかソースなのか、またシンク/ソースがどのようにスイッチングするのかについて明らかにする。 課題2TDLS分析計により森林内外のCH4濃度プロファイルを連続観測し、樹冠上フラックス連続観測結果や周辺地域の大気CH4濃度変動と併せて解析することにより、大気濃度および収支の変動とシンク/ソースの関係について明らかにする。 課題3森林内の各コンパートメント(湿地土壌・不飽和土壌・葉群・幹など)におけるCH4の吸収ないし放出速度を、濃度計にTDLS分析計を用いた自動開閉の閉鎖循環式チャンバー法により連続観測し、コンパートメントスケールでのシンク/ソースの実態と時空間変動を明らかにする。 課題4様々な樹種を対象として、TDLS分析計を組み込んだガス交換チャンバーシステムを用いた測定から、生きた葉群のCH4交換について明らかにする。 課題5協力フラックスタワーサイトに簡易に導入することができる可動式REA法-CH4フラックスモニタリングシステムを構築し、サイト間比較へ向けて稼動を開始する。 平成23年度は、まずアラスカサイトにおいては、渦集積(REA)法およびオープンパス&クローズドパス渦相関法による樹冠上CH4フラックス連続観測システムを併設し、各手法の比較検証、CH4濃度の時間変動やプロファイルの情報、CO2挙動との比較、また新たに立ち上げた開放定常式チャンバー法による土壌フラックスの連続観測結果との比較などから、樹冠上CH4フラックスデータの信頼性に対する徹底検討を行った。また桐生サイトにおいては、REA法による長期連続観測をおこなうとともに、閉鎖循環式チャンバー法によるコンパートメントスケールでのフラックス連続測定を行った。また湿地土壌・不飽和土壌を含む様々な土壌面120地点において閉鎖循環式チャンバー法によるフラックスのマニュアル多点測定を立ち上げた。桐生での渦相関(EC)法増設は、アラスカサイトでの比較実験のために測器を優先的に使用する戦略をとったために、次年度に持ち越した。REA法による長期連続フラックス観測結果を取りまとめ国際誌に発表するとともに(課題1)、葉群からのメタンフラックスは微小であるとの結果を取りまとめ国際誌に発表した(課題4)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね初年度に予定していた諸観測体制を立ち上げることに成功した。各手法の検証についてグループ内で相当の議論を重ね、一定の見解に達した。これらの取りまとめについては次年度以降を予定している。また、観測結果に基づき、葉群についてメタンフラックスは微小であるとの結論に至ることができた。REA法での樹冠上長期フラックス観測についても初期結果を公表することができ、森林生態系が一概にメタンのシンクであるとは言えず、森林タイプによりその特性は様々に異なることが明らかになってきた。以上のことから、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度予算と全体計画との関係で比較検証対象であったTDLS方式メタン計のうち一台を購入できず、完全な各社メタン計の比較はできないこととなったが、現有の測器に対する十分な検証は遂行可能であると判断している。今後の推進方策として、1)各手法検証結果のとりまとめと公表 2)次年度以降立ち上げる予定の観測項目の立ち上げと継続 3)協力サイトにおける比較観測 を予定している。
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Research Products
(15 results)