2012 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の生殖腺の性的可塑性および水産増養殖応用技術開発
Project/Area Number |
23248034
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
中村 將 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 名誉教授 (10101734)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 性的可塑性 / 卵巣 / 精巣 / 性転換 / 生殖細胞 / セルトリ細胞 / ライデッヒ細胞 / GSDF |
Research Abstract |
性転換に伴う卵巣内の細胞死および細胞増殖について調べた。その結果、性転換に伴い発達した卵母細胞にカスパーゼ3陽性反応が見られるものの、若い生殖細胞や体細胞に反応は極く少数しか見られなかった。このことから、卵巣を構成する多く細胞は精巣へ転換後にも残ることが明らかになった。またBrdUの陽性反応は性転換開始の極く初期の生殖腺の生殖原細胞の一部と、退行した卵を取り囲んでいた多数の顆粒膜細胞に見られた。その後、免疫陽性細胞群は卵巣薄板の中央部分に見られ、転換後も精巣中に散在した。この結果からも、卵巣を構成していた顆粒膜細胞は精巣へ転換後も残るとことを証明した。 卵巣分化に関係するFoxl2と精巣分化に関連するDmrt1およびgsdf遺伝子の性転換に伴う発現変化を調べ、性転換に伴う体細胞の挙動を解析した。その結果、Foxl2遺伝子は、卵巣の体細胞のみならず性転換中および精巣でも強く発現することが明らかとなった。また、Dmrt1は性転換途中の生殖腺のセルトリ細胞で特異的に発現することが明らかになった。更に、性転換の後期に発現がセルトリ細胞で見られるようになった。gsdfは卵巣にある生殖原細胞を取り囲む体細胞に既に弱い発現が見られた。性転換開始に伴い精原細胞を取り巻く体細胞で強く発現し、精巣のセルトリ細胞で強く発現した。このことからgsdfが精巣分化と密接な関係を持つ重要な因子であることを明らかにした。 ステロイド代謝酵素群の発現変化を調べ、ステロイド産生細胞の性転換における挙動を追跡した。その結果、卵母細胞を取り囲んでいた顆粒膜細胞が雄性ホルモン産生細胞へと分化する可能性が示唆された。以上のように卵巣から精巣へと転換する際に卵巣を構成した体細胞は、精巣へ転換後も残り精巣の機能を担う細胞へと分化することを明らかとした。このような体細胞の可塑性が性転換を可能にしていると結論された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ティラピアの成熟卵巣から精巣への転換誘導による幹細胞の同定を試みた。成熟雌にAIを投与すると3ヶ月後に精巣が卵巣の後方の輸卵管の近傍に出現した。精原細胞と思われる細胞は複数あり単独で分布していたことから、両性能を持つ幹細胞は複数卵巣の後方に分布しているものと推測された。精巣分化過程における精巣をステロイド代謝酵素の免疫染色を行い精巣組織のライデッヒ細胞の分化を調べたところ、精巣分化直後の組織内には陽性細胞は見られなかったが、精子形成開始後の組織にSCC,3b-HSDに体する強い免疫反応が見られた。性ホルモンを合成する体細胞は生殖細胞の分化後に出現することが明らかとなった。 ミツボシキュウセンの性転換誘起により生殖細胞と体細胞の起源の追求を行った。その結果、性転換に伴い細胞はほとんど死ぬことなく卵巣を構成する多くの細胞は転換後にも残ることが明らかになった。 卵巣から精巣へ転換する過程における発現変動する遺伝子のトランスクリプトーム解析を行った。雌、雄およびアロマターゼ阻害剤投与により作出した性転換個体の生殖腺からtotal RNAを抽出しIllumina Hiseq 2000に供した。現在詳細な解析を行っている。25年度までに解析を完了する。 雄から雌への性転換関連遺伝子のFoxl2、Dmrt1、gsdf発現動態解析を行った。特にgsdfは卵巣にある生殖原細胞を取り囲む体細胞に既に弱い発現が見られ、性転換開始に伴い精原細胞を取り巻く体細胞で強く発現した。このことからgsdfは精巣分化と密接な関係を持つ重要な因子であることを明らかにした。 不妊化した生殖腺への生殖細胞の移植を行った。移植一年後に生殖腺の観察を行ったが発達した生殖細胞は見られなかった。以上のように、目的とした研究を全て行い、項目も概ね順調に研究が進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
卵巣から精巣へ転換する過程で発現変動する遺伝子のトランスクリプトーム解析を25年度も継続して推進する。精巣分化に必須な遺伝子と卵巣維持に必須な遺伝子の洗い出を行い、その遺伝子の詳細な役割について解明を行う。今後、同定された遺伝子の詳細な役割を明らかにする方法として、培養による卵巣から精巣への転換を用いた系が有効である。25年度では、培養系による性転換により作られた精子が正常に機能し,受精能を獲得しているかを明らかにすることで培養系性転換の有効性の実証を試みる。
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Research Products
(18 results)
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[Presentation] 魚類の性転換
Author(s)
中村將
Organizer
日本行動神経内分泌学会、第三回関西支部勉強会
Place of Presentation
岡山大学牛窓臨海実験所
Invited