2012 Fiscal Year Annual Research Report
カイコ感染モデルを利用した宿主―病原体相互作用の理解
Project/Area Number |
23249009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関水 和久 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90126095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
垣内 力 東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60420238)
松本 靖彦 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60508141)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / O抗原 / O157:H7 / 抗菌ペプチド / 補体経路 |
Research Abstract |
腸管出血性大腸菌O157:H7はヒトに感染して脳症または腎症などの重篤な症状を引き起こす。腸管出血性大腸菌O157:H7の病原性の分子メカニズムを明らかにすることは治療方策を考案する上で重要である。腸管出血性大腸菌O157:H7 Sakai株の生菌をカイコの体液中あるいはマウスの腹腔内に注射すると、これらのモデル動物は殺傷された。O157抗原の構成単糖perosamineの合成酵素をコードするrfbE遺伝子の欠損株、O抗原をLPSの構成分子であるLipid A-Coreに付加する酵素をコードするwaaL遺伝子の欠損株は、いずれも親株の大腸菌O157:H7 Sakai株に比べてカイコ及びマウスに対する殺傷能力が低下していた。rfbE遺伝子欠損株とwaaL遺伝子欠損株のカイコ殺傷活性の低下はそれぞれ野生型rfbE遺伝子とwaaL遺伝子の導入により回復した。カイコの体液中において、Sakai株は増殖したのに対し、rfbE遺伝子欠損株は生菌数を減少させた。また、カイコの体液中の抗菌ペプチドの一つであるmoricinを添加した栄養培地中において、rfbE遺伝子欠損株ならびにwaaL遺伝子欠損株の増殖は抑制された。さらに、ブタの血清中において、rfbE遺伝子欠損株ならびにwaaL遺伝子欠損株の生菌数は減少したが、親株の生菌数はわずかに増加した。ブタ血清中のrfbE遺伝子欠損株ならびにwaaL遺伝子欠損株に対する抗菌活性は熱処理により失活した。以上の結果は、腸管出血性大腸菌O157:H7のLPS上のO抗原は宿主血液中の抗菌ペプチドと補体経路に対する耐性に寄与し、腸管出血性大腸菌O157:H7による動物の殺傷に必要であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カイコを使用した感染モデル動物はこれまでグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌について開発を行ってきた。本研究では、新たにグラム陰性菌の病原菌である腸管出血性大腸菌についてカイコを使った感染モデルを構築し、本菌のO抗原が病原性に必須の役割を果たすことを明らかにした。 また、グラム陰性菌のセラチア菌についても、カイコを使った感染モデルを構築し、セラチア菌の鞭毛遺伝子がカイコに対する殺傷活性に必須の役割を果たすことを見出した。以上の知見は、カイコ感染モデルがグラム陰性細菌の病原性因子の評価においても効果的であることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
無脊椎動物の免疫システムが獲得免疫としての性質を有するかについて、カイコ感染モデルを利用して検討する。獲得免疫の性質としては、抗原特異性、免疫持続性、ブースト効果について検討する予定である。
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