2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内主要ATP分解酵素VCPの機能とその調節機構の解析
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23249016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
垣塚 彰 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (80204329)
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Keywords | VCP / ATPase / 阻害剤 / 繊維状構造物 / グルコース代謝 / 飢餓 / 緑内障 / リン脂質 |
Research Abstract |
ヒトは一日あたり体重に相当する重さのATPの合成と分解を行っており、ATPとATPaseは、生物(細胞)の活動になくてはならないものである。ATPaseの中で最も豊富に存在するのが、VCPと呼ばれるATPaseであるがその機能はよく解っていない。 本研究では、VCPが果たす細胞・生体での生理機能及び神経変性を初めてとする病態での役割とその調節機構を解明することを目的とし、以下の諸点を明らかにした。 1)飢餓時でのVCPファイバー形成の役割・意義の解析:本研究では、培養細胞を飢餓時にするとVCPが細胞内で特殊な線維状の構造をとることを見いだした。このVCPファイバーの形成にはビメンチンとチュブリンが必要であり、VCPファイバーを形成した細胞では、ATPの消費が抑制されていることが観察され、このVCPファイバーの形成はVCPのATPase活性を素早くシャットダウンする飢餓に対する反応であることが示唆された。さらに、血清中の脂質成分の欠乏がVCPファイバーを誘導していることを明らかにした。 2)ATP産生におけるVCPの役割の解析:VCPをノックダウンした細胞では、細胞外のグルコースを有効に利用できないことを見いだした。少なくともグルコース細胞内への取り込みにVCPが必須であることを明らかにした。 3)ショウジョウバエのsiRNA発現ラインのスクリーニングを行い、ポリグルタミンの蓄積時でVCPの下流でリン脂質の低下に関与する候補遺伝子を数個同定した。 4)VCP阻害剤の疾患モデルでの効果の解析:我々の開発したVCP阻害剤には、網膜の神経節細胞をNMDAによる興奮毒性から保護する作用を有することを見いだした。網膜の神経節細胞は、緑内障で特異的に傷害を受ける細胞であり、これらの薬剤が緑内障の予防薬のシーズとなる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定した実験をほぼ順調に遂行し、実験結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(H24)も予定した実験を順次遂行する予定であり、特に問題となる点は見いだされていない。
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