2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23249019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐々木 裕之 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30183825)
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Keywords | 遺伝学 / エピゲノム / DNAメチル化 / 小分子RNA |
Research Abstract |
ヒトのエピジェネティック修飾による遺伝子発現制御の基盤を明らかにするため、当初の計画に沿って以下の研究を実施した。まず、(1)遺伝性DNAメチル化異常症であるICF症候群患者のうち既知の原因遺伝子DNMT3Bに変異のない症例4例について、全エクソン断片を濃縮して網羅的に配列を解読した(エキソーム解析)。その結果、4例中2例においてジンクフィンガータンパク質ZBTBの遺伝子に変異が見つかった(別の変異のホモ接合体)。このタンパク質がメチル化に関わることは知られておらず、新たなメチル化制御因子の可能性があるため、更に詳しい解析を行なっている。(2)がんのメチル化異常におけるpiRNA・siRNAの関与を明らかにするため、PIWIファミリーが高発現しており、かつメチル化異常を示す胃がん、大腸がんの細胞株5つを選び、小分子RNAの網羅的なシークエンス解析を行った。その結果、これらの細胞株においてpiRNA・siRNAは高発現しておらず、小分子RNAの大部分はmiRNAであった。これから、がんにおいてpiRNA・siRNAは必ずしもメチル化異常と関係しないことが分かった(投稿準備中)。(3)ヒト・チンパンジーのメチル化の違いを同定するため、成人女性4個体、チンパンジー雌4個体の末梢血白血球DNAをプールし、MeDIP-Chip法で解析した。その結果、21番、22番染色体において合計16領域のメチル化の違いを同定した。それらの多くは遺伝子の近傍にあり、メチル化の違いが遺伝子発現と相関している例も見つかった。さらに、種間のメチル化差異の多くが配列多型と相関することも明らかになり、メチル化状態を決めるシスの要因が明らかになった(投稿中)。また、この研究をゲノムワイドに展開するため、MBD-GST融合蛋白質を用いてメチル化されたDNA領域を濃縮し、網羅的に配列を決定して詳細な解析を行なっている(MBD-Seq)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ICF症候群の新たな原因遺伝子の候補を同定したこと、ヒト・チンパンジーにおいて独自にメチル化の違いを同定したこと等から、おおむね順調に計画が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
PIWIファミリーが高発現しており、かつメチル化異常を示す複数のがん細胞株においてpiRNA・siRNAが高発現していなかったことから、がんにおけるメチル化異常にpiRNA・siRNAが関与している可能性は低いと考えられる。よって、得られた知見を論文にまとめ、このテーマに関する実験は終了する予定である。残りのふたつのテーマに集中することで(ICF症候群り解析とヒト・チンパンジー間のメチル化の違い)、当初の目的を達することができると考えられる。
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