2012 Fiscal Year Annual Research Report
自己炎症性疾患に対する新たな分子細胞生物学的手法を駆使した病態解明・治療基盤開発
Project/Area Number |
23249056
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平家 俊男 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90190173)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八角 高裕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00511891)
小原 收 公益財団法人かずさDNA研究所, その他部局等, その他 (20370926)
神戸 直智 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50335254)
西小森 隆太 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70359800)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 自己炎症性疾患 / 自然免疫 / インフラマゾーム |
Research Abstract |
自己炎症性症候群はインフラマソームの制御逸脱による炎症性サイトカイン産生が発症起点とされるが、分子病態において不明の点が多い。さらに、個々の疾患が有する関節・中枢神経系等の固有の組織病変が、インフラマソームの制御機構に帰するか否かについては不明である。 このように、自己炎症性症候群の病態解明が進展する一方で、新たな多くの疑問が生じてきている。1)CAPSにおいては、NLRP3の機能獲得型変異が報告されているが、なお半数の症例においてはNLRP3の変異を認めず、新たな原因を同定する必要がある。2)高IgD症候群においてはmevalonate kinaseの活性低下がどのような分子機構を介してインフラマソームの活性化を惹起するか不明である。3)CAPS、高IgD症候群とも、炎症制御機構の破綻による炎症という共通症状を有するが、同時にCAPSにお症状、高IgD症候群における中枢神経症状等、疾患特有な症状が存在し、疾患の統括的把握がなされていない。4)原因不明の多くの周期性発熱疾患が存在する。5)包括的治療基盤が確立されていない。 本研究は、自己炎症性症候群の中でもCAPS、高IgD症候群に重点をおき、CAPSにおけるモザイシズム型発症病態解明・NLRP3以外の新規責任遺伝子同定・軟骨病態解明・新規診断治療基盤開発、高IgD症候群における炎症活性化機構解明・中枢神経病変の病態解析・新規治療基盤開発を行う。さらに、疾患特異的iPS細胞を作成し、分子細胞生物学的手法、モデル動物作成、次世代シークエンサーを用いたゲノミクス、トランスクリプミクスの技法を駆使して自己炎症症候群の包括的解明を行い、新規の診療基盤体系確立し、自然免疫システムの機構解明に貢献する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)CAPSにおけるNLRP3の変異を認めない症例に対する新たな原因の同定:従来の遺伝子解析方法においては、CAPS患者総数の30%前後を占めるモザイシズム患者の遺伝子診断方法の精度不足のため、確定診断に至っていなかった。これを解決するため、マルチプレックスPCR法+次世代シークエンサー法を用いた遺伝子診断システムを確立の基礎実験を終了している。2)高IgD症候群においてはmevalonate kinaseの活性低下がどのような分子機構を介してインフラマソームの活性化を惹起するか不明である。また、CAPS、高IgD症候群とも、炎症制御機構の破綻による炎症という共通症状を有するが、同時にCAPSに関節症状、高IgD症候群における中枢神経症状等、疾患特有な症状が存在し、疾患特異的な病態把握が必須である。我々は、CAPS、高IgD症候群について多くの患者さんからiPS細胞を作製させて頂いており、疾患の統括的把握に向けて、着実に研究を進展させている。3)原因不明の多くの周期性発熱疾患が存在する。CAPSにおいても、モザイシズム症例を念頭入れていても、診断に至らない症例が存在する。このようなCAPS症例、併せて、従来の疾患概念の枠では説明ができない自己炎症性疾患のiPS細胞作製、エクソーム解析、RANseqを進行させている。その成果の1つとして、長年病態不明であった兄弟発症炎症性腸疾患患者において、エクソーム解析にて候補遺伝子を同定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) NLRP3変異陽性細胞の特異的バイオマーカー分子の同定:CD34+造血未熟細胞、単球に特異的なシグナル分子を絞り込み、NLRP3変異陽性細胞に特異的なシグナル分子、バイオマーカー分子を見い出す。引き続いて、これらの分子を、シークエンスに依存しない簡易なモザイシズム診断法の開発、治療法の開発、自然免疫系新規分子の同定に供する。 2) NLRP3変異モザイシズム症例における選択的NLRP3変異陽性細胞除去療法の開発:NLRP3変異モザイシズム症例が感染症を契機として軽症化することを念頭にいれ、NLRP3変異陽性単球系細胞、CD34陽性造血幹細胞に特異的に発現するバイオマーカー、細胞死を誘導する分子を用いて、モザイシズム症例においてNLRP3陽性細胞の選択的除去治療法を開発する。 3) NLRP3変異モザイシズム患者由来iPS細胞を用いた軟骨病変に対する病態解析および治療基盤の確立疾患iPS細胞、正常iPS細胞から軟骨細胞分化を行い、両者比較の上、インフラマソーム遺伝子変異治療基盤の開発を行う。 4) 高IgD症候群患者より作成したiPS細胞を用い、中枢神経病態解析を行う:高IgD症候群症例はCAPS症例と異なり、重度の中枢神経症状を呈する症例が多い。インフラマソーム活性化機構とともに、あらたな視点より中枢神経症状発現に関し検索が必要である。高IgD症候群由来iPS細胞から神経細胞、グリア細胞、オリゴデンドロサイトを作成し、細胞分化、機能、細胞死の視点より、高IgD症候群の中枢神経病変機構を解明する。 5)原因が特定できない周期性発熱疾患よりiPS細胞を作成する:真のNIRP3変異陰性CAPS様疾患や、その他の原因不明の周期性発熱疾患から、iPS細胞を作成する。単球系細胞を作成し、インフラマソーム活性化機構の評価を行い、後の研究の資源とする。
|
-
[Journal Article] Safety and efficacy of canakinumab in Japanese patients with phenotypes of cryopyrin-associated periodic syndrome as established in the first open-label, phase-3 pivotal study (24-week results)2013
Author(s)
Imagawa T, Nishikomori R, Takada H, Takeshita S, Patel N, Kim D, Lheritier K, Heike T, Hara T, Yokota S
-
Journal Title
Clin Exp Rheumatol
Volume: 31
Pages: 302-309
-
[Journal Article] Induced pluripotent stem cells from CINCA syndrome patients as a model for dissecting somatic mosaicism and drug discovery2012
Author(s)
Tanaka T, Takahashi K, Yamane M, Tomida S, Nakamura S, Oshima K, Niwa A, Nishikomori R, Kambe N, Hara H, Mitsuyama M, Morone N, Heuser JE, Yamamoto T, Watanabe A, Sato-Otsubo A, Ogawa S, Asaka I, Heike T, Yamanaka S, Nakahata T, Saito MK
-
Journal Title
Blood
Volume: 120
Pages: 1299-1308
-
-