2011 Fiscal Year Annual Research Report
不飽和脂肪酸-オリゴデンドロサイト前駆細胞の相関による精神疾患の包括的理解
| Project/Area Number |
23249060
|
|---|
| Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
|---|
Principal Investigator |
吉川 武男 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, チームリーダー (30249958)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 素子 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, 研究員 (50435731)
山田 和男 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, 副チームリーダー (10322695)
浜崎 景 富山大学, 大学院・医学薬学部研究部, 助教 (50533494)
|
|---|
| Keywords | 必須脂肪酸 / ネルボン酸 / ステアリン酸 / GABA含有ニューロン / オリゴデンドロサイト |
|---|
| Research Abstract |
1.平成23年度の実施計画の根幹である以下の動物の準備を行った:
Fabp7と結合力の強いアラキドン酸(ARA)/ドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を調整した以下の4種類の食餌を用意した。
・ARA(-)/DHA(-):ARA,DHA共に含まない
・ARA(+)/DHA(-):ARA含む、DHA含まない
・ARA(-)/DHA(+):DHA含む、ARA含まない
・ARA(+)/DHA(+):DHA,ARA共に含む
上記のうち、ARA(+)/DHA(+)群がPUFA欠乏群の対照群と考えている。これらの餌を、交配2週間前から出生後離乳(3週齢)まで(ヒトの胎児期～思春期前に相当)C57BL/6マウスに投与した。
2.行動試験:prepulse inhibition test,forced swim test,tail suspension test(TST),light-dark test,open filed test(OF),Y maze test,elevated plus maze test,home cage activity test。これらの試験で有意差があったのは、PUFA欠乏群でTSTでの無動時間の上昇、OFでtotal distanceの減少、Y mazeで動くスピードの低下であった。これらの結果は、ヒトにおける意欲の低下に類似していると考えられた。
3.組織脂肪酸含量測定:興味深いことに、最近統合失調症で報告されたように、3週齢のマウス脳でPUFA欠乏群でネルボン酸の低下、ステアリン酸の上昇が認められた。
4.当初は平成24年度に行う予定であった組織学的解析を進めており、現在オリゴデンドロサイト、GABA含有細胞の数、形態を観察中である。
5.ヒト遺伝学的解析の一部を前倒しで行い、脂質関連分子も含んだ(全)ゲノム解析を行った。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度で計画していたマンガン造影MRI(MnMRI)は、すでに施行したY maze後以外は行わなかった。PUEA欠乏群のマウスを観察していると、ヒトに置き換えると統合失調症の前駆状態に近いと考えられたが、prepulse inhibition(PPI)で有意差がなかったので、PPI後のMn-MRIを行う意義がなくなった。また、予定していたMSイメージングは行ったが、情報量が少なかったため、論文作成においてはSupplementary dataとして利用する予定である。前倒しで一部行ったものもあるが、おおむね順調に進展している。
|
| Strategy for Future Research Activity |
今後の大まかな推進方策として、今後PUFA欠乏による遺伝子発現変化、その原因となる上流遺伝子のDNAメチル化解析を行っていく。また、PUFA欠乏によるGABA含有ニューロンとオリゴデンドロサイトの挙動に注目しているため、セルソーターでそれらの細胞群を分別収集し、個体レベルだけでなく細胞レベルでの「脳発達期の必須脂肪酸欠乏」の影響の詳細を調べて行く予定である。
|
