2012 Fiscal Year Annual Research Report
CD47-SIRPαシグナルを介した癌細胞免疫回避機構の解明とその制御法の開発
Project/Area Number |
23249064
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大段 秀樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (10363061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田原 栄俊 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (00271065)
安井 弥 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (40191118)
井手 健太郎 広島大学, 病院, 病院助教 (50511565)
小林 孝彰 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (70314010)
嶋本 顕 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 准教授 (70432713)
田中 友加 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (90432666)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 分子標的治療 / 免疫回避 / 糖鎖抗原 |
Research Abstract |
マクロファージに発現する阻害受容体シグナル制御蛋白α(SIRPα)は、正常細胞にユビキタスに発現するインテグリン関連蛋白質(CD47分子)と結合し、抑制シグナルを受け自己寛容機構が成り立つ。我々は、異種移植においてヒトマクロファージに表出するSIRPαが、ブタ細胞上に表出するCD47分子を認識できず、免疫カスケードが促進されることで激しい拒絶応答が生じることを証明した。この結果から、癌細胞がGalα1,3Galといった異種抗原と共通の糖脂質を表出しているにも関わらずCD47-SIRPα抑制シグナル伝達により免疫回避状態を享受する可能性を発想した。 本年度は、マクロファージの腫瘍貪食能のおけるCD47-SIRPαシグナルの関わりをマウスin vitroおよびin vivoモデルにより検証した。肝癌細胞株(CD47表出Hepa1-6、B6マウス由来)を用い、shRNACD47によるCD47 knock down(KD)細胞株を作成した。野生型(WT)あるいはKD Hepa1-6はCFSE蛍光色素でラベルしてtarget とし、B6マウスの腹腔内マクロファージをeffectorとしてin vitro 貪食試験を行った。マクロファージの貪食能は、WTと比較してKD株に対して著明に亢進した。また、anti-mouse SIRPα抗体によるSIRPα-CD47シグナルの遮断を行ったところ、WT株に対する貪食能亢進を認めたが、KD株ではその効果は減弱した。WT株の腹腔内移入によるin vivo貪食能試験では、anti-SIRPα抗体投与群で有意な貪食能の増強を認めた。大腸癌腫瘍株CMT93を用いても同様な結果を得た。 癌細胞がCD47-SIRPα シグナル伝達を介してマクロファージによる貪食を回避すること証明し、その制御による新規抗腫瘍治療の可能性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、癌細胞が生体防御機構を掻い潜り免疫抑制環境を構築する機構として、CD47-SIRPαシグナル伝達の有意性を解明し、その制御により分子標的治療や細胞療法の効果を著明に増強する新規抗腫瘍治療戦略を開発することを目的とする。 癌細胞に対する抗腫瘍免疫応答のうち、マクロファージの活性化におけるCD47-SIRPα抑制シグナルの関与を解明し、その制御による抗腫瘍療法の可能性が確認できた。 NOD/SCIDマウスのSIRPαはヒトCD47と交差し抑制シグナルが作動することが確認されている。それ故、マウスマクロファージはヒト腫瘍細胞上のCD47からSIRPαを介して抑制シグナルを受け、ヒト腫瘍細胞の生着を許す。現在CMAH-deficient (CMAH-KO)マウスおよびGalT-deficient(Gal-KO) をNOD/SCIDマウスとバッククロスし、順調にマウスモデルシステムの準備が進みつつある。今後、このNOD/SCIDマウスにヒトGAlマクロファージを移入し、さらにGalあるいはCMAH発現ヒト癌細胞株を移入し、抗CD47あるいはSIRPα抗体の効果を判定する。 本研究計画の実施に必要な設備および技術は現在全て整い、円滑に計画が遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、癌細胞に表出する異好性抗原(Gal-α1,3-Gal epitopeなど)に対する免疫応答を、CD47-SIRPα抑制シグナルの制御によって促進する新規の分子標的療法(抗CD47抗体およびSIRPα抗体)開発を目指した基礎研究を継続する。まず、細胞表面上にα1,3-galactosyltransferase(Gal)抗原の表出を欠き、血清中に抗Gal自然抗体が検出されるGalノックアウトマウスを用いて、網内系マクロファージを採取し、同系のGal抗原表出肝癌細胞株および大腸癌細胞株を標的とした細胞傷害性試験を行う。さらに、培養系にGalノックアウトマウスから分離した抗Gal抗体を添加し、細胞傷害性の増強効果を検討する。Gal抗体産生細胞は、CD11b+B細胞(B1b細胞)であり、またB1b細胞には、SIRPαが表出していることを我々は確認している。そこで、CD11b+B細胞と癌細胞株を共培養してB細胞の活性化を検討する。共培養系では、抗CD47および抗SIRPαブロッキング抗体を添加し、免疫細胞活性の相乗促進効果の可能性を解析する。同様のin vitro実験をsi-RNAによりCD47遺伝子をノックダウンした腫瘍株を標的として検討する。 また、Galノックアウトおよびwild type B6マウスにluciferase-トランスフェクションしたGal表出肝癌腫瘍株および大腸癌腫瘍株を移入した癌生着モデルを作成する。腫瘍の生着をin vivo imaging(NightOWL LB983)および病理検索によって比較し、Gal抗原-抗体結合から惹起される免疫応答を包括評価する。この担癌モデルに放射線照射したGal wild typeマウスの胸腺細胞(Gal高発現)を皮下投与(Gal-ワクチン)し、抗腫瘍効果を検討する。
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Research Products
(4 results)