2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経損傷防御の基盤研究とトランスレーショナルリサーチ
Project/Area Number |
23249079
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
塩田 清二 昭和大学, 医学部, 教授 (80102375)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大滝 博和 昭和大学, 医学部, 助教 (20349062)
中町 智哉 昭和大学, 遺伝子組換え実験室, 助教 (30433840)
土肥 謙二 昭和大学, 医学部, 講師 (20301509)
|
Keywords | PACAP / 神経細胞死防御 / ヒト骨髄間葉系幹細胞 / 神経損傷の防御 / トランスレーショナルリサーチ |
Research Abstract |
PACAP(pituitary Adenylate Cyclase Activating Polypeptide)は、神経細胞の保護および神経修復・再生の二つの作用を有する神経ペプチドであり、神経損傷疾患の治療戦略に重要な役割を果たす。PACAPのヒトへのトランスレーショナルリサーチに向けて、本年度はPACAP遺伝子欠損マウスと野生型マウスを用いてPACAPによる神経細胞死防御の分子基盤の全容解明とPACAPによる再生医学に向けての動物実験を行った。 1)PACAP遺伝子欠損マウスを用いたPACAPによる細胞死抑制の分子基盤の解明 PACAP KOマウスを用いて脳虚血、脊髄損傷、網膜障害モデル動物を作成し、神経細胞死の有無をTUNEL法、テトラゾリウム(TTC)染色などにより検出し、細胞計測を行った。さらにモデル動物にPACAPを静脈または脳室内投与を行い、神経細胞死抑制効果のあることが分かった。さらに、傷害後の神経組織からRNAおよびタンパク質を抽出し、傷害組織内におけるPACAPおよびPACAP受容体の発現および細胞死や炎症反応に関わる因子の発現動態を行い、既知および未知の遺伝子発現を確認した。さらに神経損傷後に生じる神経前駆細胞、活性化グリア細胞、軸索再生に関わる因子についても同様に解析し、軸索伸張遺伝子および遺伝子産物の同定に成功した。 2)PACAPの神経保護作用に係る遺伝子およびタンパク質の網羅的解明 PACAPによる神経保護作用には直接作用以外に間接的作用によることが証明されている。そこで脳虚血半球および正常半球を採取し液体窒素下で微粉末化したのちcDNAマイクロアレイ解析(アジレント社製)およびプロテオミックス解析(MALDI/TOFMS; Shimadzu 社製)を行った。その結果新規軸索伸張関連因子をオミックス解析にて同定し、さらに抗体を作成して正常および損傷個体の脳内各部位のより詳細な発現動態と分布局在の同定を現在行っているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年間のオミックス解析を行い、PACAPによる神経保護作用の分子メカニズムを解析してきた結果、新規軸索伸張因子を特定することが出来た。これは予想以上に研究が進展したことを意味している。今後はこの因子とPACAPの直接的な因果関係を明らかにし、さらにこの因子が神経保護作用に関してPACAPの下流域にあり重要な機能を発揮しているかどうかマウスを用いた動物実験を行い実証する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずはマウスにおける脳損傷保護作用を持つPACAPの下流域をつきとめ、昨年発見した新規軸索伸張因子がこの下流域の最重要分子であることを遺伝子改変実験あるいは培養実験で証明していきたいと考えている。さらに今後はげっ歯類にこだわらず、霊長類においても脳虚血実験とPACAPの神経保護作用についても実験を進めて行く予定である。
|
Research Products
(22 results)