2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経損傷防御の基盤研究とトランスレーショナルリサーチ
Project/Area Number |
23249079
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
塩田 清二 昭和大学, 医学部, 教授 (80102375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土肥 謙二 昭和大学, 医学部, 講師 (20301509)
大滝 博和 昭和大学, 医学部, 助教 (20349062)
中町 智哉 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (30433840)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | PACAP / 神経細胞死防御 / ヒト骨髄間葉系幹細胞 / 神経損傷の防御 / トランスレーショナルリサーチ |
Research Abstract |
1 ) PACAP 遺伝子欠損マウスを用いたPACAP による細胞死抑制の分子基盤の解明 PACAP KOマウスを用いて脳虚血、脊髄損傷、網膜障害モデル動物を作成し、神経細胞死の有無をTUNEL法、テトラゾリウム(TTC)染色などにより検出し、細胞計測を行った。さらにモデル動物にPACAP を静脈または脳室内投与を行い、PACAPには神経細胞死の顕著な抑制効果のあることが分かった。さらに、傷害後の神経組織からRNAおよびタンパク質を抽出し、傷害組織内におけるPACAPおよびPACAP受容体の発現および細胞死や炎症反応に関わる因子の発現動態をDNA アレイを行った。さらにPACAPの下流域にCtramという遺伝子の存在が明らかになり、その遺伝子産物がCrmp2というタンパクであり、神経軸索伸張促進作用のあることが分かった。 2 ) PACAP の神経保護作用に係る遺伝子およびタンパク質の網羅的解明 PACAPによる神経保護作用には直接作用以外に間接的作用によることが証明されている。そこで脳虚血半球および正常半球を採取し液体窒素下で微粉末化したのちcDNA マイクロアレイ解析(アジレント社製)およびプロテオミックス解析(MALDI/TOFMS;Shimadzu 社製)を行った。その結果新規軸索伸張関連因子(Crmp2)をオミックス解析にて同定し、さらに抗体を作成して正常および損傷個体の脳内各部位のより詳細な発現動態をしらべたところ、虚血6時間で梗塞側にこのタンパクが神経細胞内に発現していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、PACAPのヒトへのトランスレーショナルリサーチに向けて、本年度はPACAP遺伝子欠損マウスと野生型マウスを用いてPACAPによる神経細胞死防御の分子基盤のOMIX解析を行って全容解明を行い、さらにPACAP による神経系の再生医学に向けての動物実験を行った。当初はOMIX解析にてPACAPが虚血細胞死を抑制するメカニズムの一端を明らかにできればよいと考えていた。さらに経時的に新規遺伝子あるいは遺伝子産物を特定できることが出来ればよいと考えていたが、実際に研究がより進展し、Crmp2という遺伝子産物の発現をPACAPが6時間で亢進すること、また24時間後では効果のないことが明らかになった。さらにこのCrmp2という遺伝子産物が神経の軸索伸張促進作用のあることが他の著者によって報告されていたが、PACAPがこのタンパクの発現を亢進させることを初めて我々は明らかにした。さらに、この抗体を用いて発現細胞をしらべたところ、神経細胞に特異的に発現していることが分かった。以上のことから、マウスの脳においては、脳虚血あるいは脳梗塞によって内在性のPACAPが神経軸索伸張因子であるCrmp2の発現を亢進させて神経修復にはたらく可能性が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のようにマウスでは、PACAPは虚血性神経細胞死を抑制し、また神経軸索伸張因子の発現誘導を行うことが明らかになったので、今後は大型動物であるサル(アカゲサル)を用いてマウスと同じような実験を行う。また人へのトランスレーショナルリサーチを行うことを本研究の後半で計画しており、すでに2年間のマウスでの動物実験を踏まえて、さらに人に近づけるようなサルを用いた動物実験を開始することが可能となってきた。本年度は、まずアカゲザルのパーマンネントの脳虚血モデルを作成し、それにPACAPを投与した群としない群の2群の個体を用いてPACAPの神経細胞死抑制効果をしらべる予定にしている。さらに予備実験がうまくいけば、動物の組織を取り出して細胞死抑制機構の解析を行うことを計画している。また同時にサルの行動評価を行い、脳虚血あるいは脳梗塞時におけるPACAPの細胞死抑制作用が行動学的にも影響を与えるかどうかについても検討をする実験計画を立てている。本年度では予算的な制約もあるので、個体数をそれほど多くは増やすことが出来ないが、少なくとも3頭づつで2回ほど動物実験を行なう計画をたてている。
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Research Products
(10 results)