2012 Fiscal Year Annual Research Report
漢字文化圏における典籍の集積、国際的伝播及びその伝承に関する実証的研究
Project/Area Number |
23251011
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石塚 晴通 北海道大学, -, 名誉教授 (10002289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 証壽 北海道大学, 文学研究科, 教授 (20176093)
豊島 正之 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10180192)
赤尾 栄慶 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 学芸副部長 (20175764)
大槻 信 京都大学, 文学研究科, 准教授 (60291994)
落合 俊典 国際仏教学大学院大学, 仏教学研究科, 教授 (10123431)
岡田 至弘 龍谷大学, 理工学部, 教授 (30127063)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 敦煌本 / 楊守敬本 / 正倉院本 / 漢文典籍の国際交流 / 漢文典籍の工学的分析 |
Research Abstract |
漢字文化圏で生成された典籍(儒教経典・仏典等で、非漢字の文献も含む)は、漢字文化圏内部での伝承を越えて、広く世界的共有を見るに至ったが、その展開・分散の過程の学術的探求は殆ど行われていない。本研究は、この世界規模での共有文化遺産である漢字文化圏典籍について、その生成・展開・伝播の過程を実証的に跡づけ、その過程の持つ歴史的意義を明かにしようとする初めての試みであって、既に敦煌本・正倉院本・日本高山寺本等についての実証的な研究に豊富な実績を持つ文献学者グループに加え、更に工学(光学的非破壊分析)・仏教史学・日本史学の専門家の参加をも得て、かつてない規模で漢字文化圏での典籍の生成・伝播を解明しようとするものである。本年度は次の成果を挙げた。 1.漢字文化圏の典籍には、元は一体を成していた典籍資料体が、一旦離散して分蔵され、更に後日再集積される例が少なくない。本研究が解明しつつある厖大な楊守敬旧蔵書の内、平成24年度には中国国家図書館蔵宋版思溪版一切経を調査し、楊守敬蒐集に至る以前の中国寺院の収蔵、それが日本の中世に奈良の寺院に移入され、更に近世に京都の寺院に移り、それを明治期に楊守敬が入手するに至った経緯を解明することに成功した。 2.敦煌本・正倉院旧蔵本・高山寺本等の書誌的調査と工学的分析とを併せて進めた。敦煌隋写本の特質・中国写本と日本写本との相違を見分ける方法等で大きな進展があった。 3.上記により判明した新事実を、作成中のデータベースに加えた。 4.研究成果の中間発表として国際ワークショップ「漢字文献のコディコロジー(Codicology of Hanzi Scripts)」を開催し、同名の基調講演を英文小冊子として配布した。また、訓点語学会の招待講演「文献の作成と受容(訓読)」・東洋文庫の講習会「東洋のコディコロジー」等を通して研究成果の紹介・普及を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
厖大な楊守敬旧蔵本の内、大部な宋版思溪版一切経の中国・日本に亘る国際的伝播の経緯が予想以上に早く明かになり、又敦煌本の工学的分析が進み書誌的調査の対象がより明確になった。又、研究成果の紹介・普及が予想以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的・研究計画の適格性が確信され、この方向で研究を推進して行けば大きな成果となる見込みである。又、24年度に配布した英文小冊子(“Elements of Codicology of the Hanzi Script”)に増補改訂を加え、世界の図書館・博物館の教科書版とする。
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