2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23251014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大貫 静夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (70169184)
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Keywords | アムール川下流域 / 新石器時代 / 石刃鏃 / コンドン1遺跡 / オシポフカ文化 / コンドン文化 |
Research Abstract |
本研究課題ではこれまで続けてきたアムール川下流域における先史社会の解明研究を基礎として、さらに河口部側にそのフィールドの軸足を移し、環日本海北回廊の実態解明を目指している。日本列島北部はサハリン島を介してアムール川下流域と連なっており、日本列島先史社会の形成、発展、変容にどのように関わってきたかをあきらかにするためである。とくに、その関わりが注目されている時期としては、(1)旧石器時代から新石器時代への移行期、(2)縄文時代早期の北海道東部に縄文文化とは異なる系統に属する石刃鏃文化が出現する時期、(3)続縄文時代以降、北海道北・東部がサハリン島との交渉を強める段階がある。ただし、つねにそれらの間に密接な加工庄があったとは考えていないというのが代表者らの理解である。(2)の段階での大陸との関係については否定しないが、(1)の段階ではこれまで多くの研究者がサハリン、北海道経由での大陸からの伝播があったとみてきたが、そのような単純な理解に代表者らは懐疑的である。この(1)から(2)への変遷はこれまでアムール川下流域では不明であったため、試掘資料からその時期の遺物を含むと考えられたコンドン1遺跡の調査を23年度の秋に実施し、冬に整理を行った。これによって、アムール川下流域における旧石器時代末期オシポフカ文化から新石器時代コンドン文化への移行の過程が明らかとなり、アムール川下流域における石刃鏃石器群の出現過程がより詳しく分かるようになった。そして北海道東部の縄文時代早期石刃鏃石器群出現の背景を考えるのに重要な資料を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンドン1遺跡の調査により、アムール川下流域における旧石器時代から新石器時代への移行過程を知る上での良好な資料を得ることができた。これによって、日本列島とは全く異なるプロセスが展開したことを知ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の調査成果であるコンドン1遺跡の段階から次の典型的な新石器時代文化であるコンドン文化への移行過程を明らかにすることは、縄文時代早期の北海道東部に展開する石刃鏃石器群の由来を解明する上でも重要な段階であり、それに相応しい遺跡を選んで発掘調査をおこなう。そして、アムール川下流域と北海道をつなぐ位置にあるサハリンの様相を知るために資料調査をおこなう予定である。
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Research Products
(3 results)