2011 Fiscal Year Annual Research Report
クメール都市空間像の探求-アンコール・トム中央寺院バイヨンの発掘調査を中心に-
Project/Area Number |
23251017
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 信夫 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (30449342)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 英文 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (20214025)
|
Keywords | 考古学 / 東南アジア史 / カンボジア / アンコール遺跡群 / アンコール・トム / バイヨン寺院 / 貿易陶磁 / クメール陶磁 |
Research Abstract |
平成23年度は、(a) 既往調査記録の整理、考古編年構築に向けての記録作業、目録作り(遺跡情報の整理、既往発掘地点の配置図作成、既往発掘地点の現地確認と遺跡環境の把握および既存の報告書との照合)、(b) 後期バイヨンの寺院配置関連遺構の解明に向けた、バイヨン寺院伽藍内外における発掘調査、(c)都城アンコール・トム内の悉皆調査、考古遺物の表面採集調査、(d)サンプリングした自然遺物、金属遺物の輸送、分析と金属遺物の保存処理(極力カンボジアでの保存処理を追求し、やむをえないものについては調査後日本国内にて行った)、(e) カンボジア人若手考古学者への技術移転、(f) 調査の進行状況を公開するホームページの作成準備、以上6項目を中心に研究を行った。また、比較参考資料の整理、収集等を中心とした国内作業により上記6項目を補った。 具体的には(a)は通年作業として進めながら、(b)と(c)のフィールド調査を行い、これらにより得られた資料をもとに、資料の特性により日本国内若しくは現地カンボジアにおいて(d)を行った。(e)については、前述の(a)(b)(c)を進めるなかで平行して行った。主に日本人専門家渡航時に集中して行ったが、その他の期間も電子メール等を用いて1年間の継続した研究教育を行うようにした。(f)はその他の同エリアで活動する保存修復団体のホームページ等を参考に、現地NGOと共に検討を重ねた。最終的な情報公開の方法につては、新規ホームページ作成ではなく、既存のものと融合することを検討している(H24年度実績報告参照)。 平成23年度の発掘調査(b)は寺院南側に延びる排水溝の追跡及び東正面における南貯水池周辺において実施したが、より検討を深化させるため、H24年度も継続して同エリアの発掘を進めていく。また、これらの調査結果による図面の作成・出土遺物の整理作業は,逐次進行中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の3つの視点から点検及び評価を行った。 (1)フィールド調査をもととした遺構分析においては、これまでにバイヨン寺院の前・後期平面計画において、未知部が多く残る南東部外郭周辺の空白部の解明が進んでおり、これは大きな進展と言えよう。但し一定の知見を得るためには、同一エリアにて更に遺構分析を重ねる必要がある。引き続き努力したい。 (2)現地カンボジア人専門家への技術指導(発掘調査・遺物整理・報告書作成)は段階的に訓練しており、すべてを到達点に導くための時間はやや不足している。平成23年度は主に発掘調査を中心として進められたため、それに伴う遺物の出土が非常に多く見られた。現状では、カンボジア人専門家にその整理・図化などの作業が集中している状況である。しかし、これらフィールド調査とデスクワーク両者の積み重ねにより、最終年度には研究・分析を含め一定の力量が獲得される見込みがある。また以後の発展にも大きな期待が寄せられる。しかし、激しい気候風土等の研究教育環境においては日本並とはいかず、実質的に現地の状況に適応するための達成度を獲得するためには、それなりの忍耐が必要であろう。 (3)遺物においては金属や道具など特殊品やまた自然遺物もあり、日本国内の保存処理、化学分析など多方面の研究者の応援を得ながら、多面的な調査・分析を進めている。金属の分析においては、年代や産地を特定への解明が進んでおり、大きな進展である。日本や近隣諸国、またカンボジア国内他地域と比較研究中である貿易陶磁資料や金属資料また自然遺物については、最終年度には総合的な分析を行い、まとめとしたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には、引き続きアンコール遺跡群での継続的なフィールド調査(現地オフィス内での遺物の整理・分析作業を含むバイヨン寺院とその周辺の発掘調査等)を主な研究活動とし、比較参考資料の整理、収集等を中心とした国内作業によってこれを補うこととする。最終報告内容である、東南アジア全域における相互の交流プロセスを解明するため、関連する他の考古学サイトへの踏査や、国際的研究者との討議の準備を進めたい。具体的には以下の6項目を基軸とした調査・作業を実施する。 (a) 既往調査記録の整理、考古編年構築に向けての記録作業、目録作り(遺跡情報の整理、既往発掘地点の配置図作成、既往発掘地点の現地確認と遺跡環境の把握および既存の報告書との照合)については、担当するカンボジア人専門家に一定の力量が認められるため、通年してカンボジア人専門家が作業を行い、日本人専門家が適宜チェックを行うようにする。(b) バイヨン寺院伽藍内外における発掘調査については、現在進行中の寺院南側に延びる排水溝の追跡及び東正面における南貯水池周辺をより詳細に行っていくほか、寺域内外の南東部、北東部及び東正面の参道周辺に調査範囲を広げ、アンコール都市建設過程における資源、資材供給システム等に対し、より深い解明を目指す。(c) サンプリングした自然遺物、金属遺物の輸送、分析と金属遺物の保存処理。(d) カンボジア人若手考古学者への技術移転及び国際学会への参加、発表。(e) 近隣周辺諸国(ベトナム・タンロン城、中国・浙江省、日本・平安京など)との中国陶磁の比較調査。(f) 学会発表、シンポジウムの開催、成果報告書の作成等。(g) 調査の進行状況を公開するホームページの作成。
|